悪臭放つ“クジラの死骸に潜る治療法”とは?実在した奇妙すぎる民間療法

かつてオーストラリアの一部地域では、腐敗したクジラの死骸に人が潜り込むという、信じがたい“健康法”が存在した。目的は慢性的なリウマチ(関節痛)の緩和であり、その治療法は一部で熱烈に支持されていたという――。
強烈な悪臭の中で始まった奇妙な「療法」
巨大なクジラの死体が海岸に打ち上げられると、その腐敗臭は数キロ先にまで届き、鳥やハエすら近づかないほどの凄まじさだという。だが1890年代のオーストラリア・ニューサウスウェールズ州、トゥーフォールド湾では、その“忌まわしい死骸”が一部の人々にとって癒しの源とされていた。
ある新聞記事によれば、ある日リウマチに苦しんでいた男性が、既に切り開かれたクジラの死骸を見つけ、酒に酔っていた勢いも手伝って中に潜り込んだという。2時間以上もその中に留まった彼は、外に出ると痛みが消え、見違えるほど元気になっていたというのだ。
この逸話は真偽不明であるが、事実として記録に残るのは、その後この“クジラ温熱療法”が一部で定着し、観光も兼ねた療養目的で多くの人々が訪れるようになったという事実である。
腐った脂肪に埋もれて90分 “海の温泉”で奇跡を待つ人々
この治療法は、実際にクジラの体内に“墓穴”のようなスペースを掘り、そこに患者が横たわるというものだった。クジラの腐敗熱によって内部温度は40度を超え、まるでサウナのような環境が生まれる。治療を受けた患者たちは、全身を脂肪と内臓に包まれながら、最大で2時間近くそのままの状態で過ごしたという。
ある記録によると、3人の男性がそれぞれ90分間クジラの中に入り、1人は杖なしで歩けるようになり、別の1人は上半身の痛みが軽減されたと語っている。
また、患者たちは「新鮮な死骸」よりも「しっかり熟成された」ものを好んだとされる。これは、痛みを和らげる効果が“腐敗によって生じたガス”にあると考えられていたためだ。アンモニアやメタン、硫黄化合物などの刺激的なガスが、強力な熱を伴い体内を刺激すると信じられていた。
奇妙なスパ文化と消えていった民間療法
この“クジラスパ”には、ちょっとした観光業の要素もあった。患者たちはホテルから案内されてクジラの死骸までボートで移動し、治療を受ける。ホテル側もその滞在費や食費で利益を得ていたとされ、ある意味で“死体観光”とも言えるビジネスが成り立っていたのである。
なかには「特定の日にクジラを用意してほしい」と電報で依頼する者まで現れたという。医師の予約のように、死骸治療が扱われていたわけだ。
女性の場合は裸ではなくウールの衣を身に着けて体を覆いながら潜り込む形式であったが、共通して言えるのは、その環境がいかに苛酷で、かつ“信じられていた”かということだ。
一部の治療計画では、30時間に及ぶ長期滞在を推奨し、それにより1年分の痛みが取り除かれるという主張もあった。

治療か狂気か?
この療法は1910年代初頭までは一部に存在していたが、やがて消えていった。近代医療の進展とともに、腐敗ガスによる毒性や衛生面のリスクが理解されるようになり、次第にこのような民間療法は姿を消していった。
とはいえ、これは当時の人々がいかに“何かにすがりたい”という思いから新しい治療法を試し、信じ、広めていったかを象徴するエピソードとも言える。
現代では想像もつかないような方法だが、その奇妙さの奥にある人間の本質である「痛みから逃れたい」「癒されたい」という願いは、時代を超えて共通なのだろう。
参考:Mental Floss、ほか
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2024.10.02 20:00心霊悪臭放つ“クジラの死骸に潜る治療法”とは?実在した奇妙すぎる民間療法のページです。クジラ、治療、腐敗などの最新ニュースは好奇心を刺激するオカルトニュースメディア、TOCANAで