「偽装エイリアン侵攻」陰謀論がSNSを席巻? 謎のドローン騒動と2025年の不安

「政府やエリート層が、エイリアンによる地球侵攻をでっち上げ、世界を支配しようとしている」――。にわかには信じがたいこんな話が、「偽装エイリアン侵攻(Fake Alien Invasion)」陰謀論として、特にアメリカのSNSユーザーの間でまことしやかに囁かれ、2025年現在、奇妙な注目を集めている。もちろん、これは科学的根拠に乏しい陰謀論の一つだが、なぜ今、このような説が広がりを見せているのだろうか。
陰謀論の核心「プロジェクト・ブルービーム」とは?
この陰謀論の根底にあるとされるのが、「プロジェクト・ブルービーム(Project Blue Beam)」と呼ばれる計画だ。これは1990年代にカナダの陰謀論者サージ・モナスト氏が提唱したもので、NASAや国連といった国際機関が、ホログラムなどの高度な映像技術や心理操作を駆使して、大規模なエイリアン侵攻を演出し、それによって世界統一政府(新世界秩序)の樹立をもくろんでいる、という壮大なストーリーである。
この説は長らくUFOや政府の隠蔽工作といった他の陰謀論と結びつきながら、インターネットの片隅で語られてきた。しかし、ある出来事をきっかけに再び息を吹き返したのだ。
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再燃の引き金:2024年、東海岸を騒がせた謎のドローン群
2024年末、TOCANAでも何度か報じたが、アメリカ東海岸の夜空に突如として多数の謎のドローンが出現し、大きな騒ぎとなった。11月18日にニュージャージー州モリス郡で最初の目撃情報が報告されて以降、ニューヨーク、ペンシルベニア、マサチューセッツ、コネチカット、バージニアの6州にわたり、夜間に光を放つドローンの編隊が相次いで確認されたのだ。
これらのドローンの正体や目的は不明のままで、目撃者やSNSユーザーの間では不安が急速に拡大。この騒動に、「プロジェクト・ブルービーム」を信じる人々が飛びついた。「これは2025年に計画されている偽装エイリアン侵攻のためのテスト飛行、あるいは準備段階に違いない」というわけだ。

著名人とSNSが煽る陰謀論の拡散
この陰謀論の再燃に油を注いだのが、一部の著名人やインフルエンサーたちだ。女優でトランプ前大統領の支持者としても知られるロザンヌ・バー氏は、自身のX(旧Twitter)で「プロジェクト・ブルービーム」に言及し、ドローン騒動が偽装侵攻の準備であると主張。陰謀論メディア「インフォウォーズ」のホスト、アレックス・ジョーンズ氏も、UFO研究家のスティーブン・グリア博士と共にこの説を拡散し、政府による隠蔽工作の可能性を示唆した。
さらに、共和党下院議員のマージョリー・テイラー・グリーン氏や保守派コメンテーターのマット・ウォルシュ氏なども、ドローンが政府によって操作されている可能性やエイリアンの関与を示唆するような発言を行い、議論を煽った。特に「MAGA(Make America Great Again)」と呼ばれるトランプ氏の熱心な支持者層や、右翼的なコミュニティを中心に、この陰謀論は瞬く間に広まっていった。
公式見解は「脅威なし」、専門家は「不安が生む物語」と指摘
一方で、アメリカ政府機関は、このドローン騒動と陰謀論を冷静に受け止めている。FBI(連邦捜査局)と国土安全保障省は2024年12月の声明で、ドローンの出現は国家安全保障や公衆の安全に脅威を与えるものではないと発表。国防総省(ペンタゴン)のサブリナ・シン報道官も、一部で囁かれたイランの「母船」がドローンを展開したとする説を明確に否定し、ドローンの原因は不明ながら悪意ある活動の証拠はないと強調した。
専門家もまた、この種の陰謀論は科学的根拠に欠けるものであり、社会的な不安や既存の権力構造への不信感から生まれる物語だと指摘している。学術誌「Humanities and Social Sciences Communications」に2025年4月に掲載された研究では、エイリアン関連のUFO陰謀論において、「専門家」とされる人物の意見が、科学的根拠がないにもかかわらず陰謀論を正当化するために利用されるケースが多いと分析されている。

なぜ陰謀論は広まるのか? 不確実な時代を映す鏡
では、なぜ科学的根拠のない「偽装エイリアン侵攻」のような陰謀論が、これほどまでに人々の心を捉えるのだろうか。専門家は、社会全体の不安感や、政府・メディアに対する根強い不信感が背景にあると分析する。特に、情報が玉石混交で飛び交うSNS時代においては、センセーショナルな情報は瞬く間に拡散し、一度信じ込んだ人々をさらに強固な信念へと導きやすい。
謎のドローン騒動の真相はいまだ不明だが、「偽装エイリアン侵攻」という陰謀論は、まさに現代社会の抱える不安や不信、そして情報のあり方を映し出す鏡のような存在と言えるのかもしれない。
もちろん、これはあくまで数ある陰謀論の一つである。冷静な目で情報を見極めるリテラシーが、今の時代を生きる私たちには一層求められているのかもしれない。
参考:The Times of India、Humanities and Social Sciences Communications、ROLLING STONE、ほか
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2024.10.02 20:00心霊「偽装エイリアン侵攻」陰謀論がSNSを席巻? 謎のドローン騒動と2025年の不安のページです。宇宙人、陰謀、ブルービーム計画などの最新ニュースは好奇心を刺激するオカルトニュースメディア、TOCANAで