バミューダトライアングルは本当に「魔の海域」なのか? 伝説と真実の境界線

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 大西洋に浮かぶ「バミューダトライアングル」。この言葉を聞くだけで、謎めいた失踪事件や超常現象を連想する人は多いだろう。船舶や航空機が忽然と姿を消すこの海域は、長年にわたり多くの伝説と陰謀論を生み出してきた。しかし、その真相はどこにあるのか。今回は、この悪名高い海域に関する興味深い事実を紐解いていく。

伝説の始まり「フライト19」と名称の由来

 バミューダトライアングルのミステリーを語る上で欠かせないのが、「フライト19」の事件だ。1945年12月5日、アメリカ海軍の雷撃機5機がフロリダから訓練飛行に出発したが、奇妙な無線交信を残して消息を絶った。パイロットたちは方向感覚を失い、「コンパスが狂っている」と訴え、救助に向かった飛行艇までもが二重遭難した。この事件は、この海域が「異次元への入り口」であるかのようなイメージを決定づけるきっかけとなった。

 しかし、この海域に「バミューダトライアングル」という名が付けられたのは、意外にも後のことだ。1964年、作家のヴィンセント・ガディスが雑誌『Argosy』の記事で、フロリダ、プエルトリコ、バミューダを結ぶ三角形のエリアで起きる不可解な事件を特集し、「死のバミューダトライアングル」と名付けたのが始まりである。それ以前にも奇妙な噂はあったが、この命名によって世界的に知られるミステリースポットとしての地位を確立したのだ。

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Bermudan_kolmio.jpg: Alphaiosderivative work: -Majestic- (talk) – Bermudan_kolmio.jpg, パブリック・ドメイン, リンクによる

コロンブスも目撃? 歴史に残る奇妙な現象

 実は、この海域での奇妙な体験談は20世紀に始まったわけではない。1492年、クリストファー・コロンブスが大西洋を横断した際にも、不可解な現象が記録されている。

 コロンブスは、空に巨大な炎を見たり、コンパスが異常な動きを示したりしたと書き残している。また、陸地発見の直前には遠くに謎の光を目撃したという報告もある。これらの記述が事実であれば、バミューダトライアングルの「呪い」は、大航海時代から船乗りたちを悩ませてきたのかもしれない。

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クリストファー・コロンブス – painting by Ridolfo Ghirlandaio (public domain)

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アトランティスから「海のおなら」まで飛び交う諸説

 バミューダトライアングルの謎を解明しようと、これまで数多くの説が唱えられてきた。1974年のベストセラー本では、沈没した古代都市アトランティスの超古代文明が影響しているという説が広められた。また、ワームホールが存在するというSFチックなものまである。

 その一方で、科学的な説明も試みられている。その一つが「メタンハイドレート説」、通称「海のおなら」だ。海底から噴出したメタンガスの泡が海水の密度を下げ、船の浮力を奪って沈没させるという理論である。さらに、上昇した可燃性ガスが航空機のエンジンに引火し、墜落させる可能性も指摘されている。

統計が示す「真実」とは

 多くの伝説に彩られたバミューダトライアングルだが、統計的に見れば、実は他の海域と比べて特別危険な場所ではないという見方が有力だ。

 1991年、天文学者のカール・セーガンは「統計的な誤謬(ごびゅう)だ」と断じた。交通量の多いこの海域で事故が起きるのは確率的に当然であり、船や飛行機が消えるのは、単にそれらが水に沈むからだというわけだ。アメリカ海洋大気庁(NOAA)も、熱帯低気圧の通り道であることや、ガルフストリーム(メキシコ湾流)による急激な天候変化など、自然現象で説明が可能だとしている。

 結局のところ、バミューダトライアングル最大の謎は、私たちの想像力が生み出した「ミステリーへの渇望」そのものなのかもしれない。

参考:MENTAL FLOSS、ほか

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