「彼女の体内にもう一人の自分がいた」——中国の殺人事件で判明!“キメラ”の戦慄の真実

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「犯人のDNAが検出された。だが、採取した検体を見ると一致しない」——SF映画や法廷ドラマに出てきそうな話だが、これは現実に起きうることだ。ひとつの体に、ふたつの別人の遺伝情報が混在している人間が存在する。「キメラ」と呼ばれるその存在は、神話に登場するライオンとヤギと蛇が合体した怪物と同じ名を持つが、その実態はもっと奇妙だ。

 2026年、学術誌『Forensic Science International: Genetics』に掲載された論文が、ある事件の謎を解き明かした。中国で発見された、頭部に銃創を負った女性の遺体。鑑識が血液を分析すると、そこには「男性のDNA」が混入していた。ラボの汚染か?接触感染か?検査は計17回、複数の臓器と血液サンプルに対して繰り返された。それでも答えは変わらなかった。彼女の体のあちこちに、「別人」のDNAが刻まれていたのだ。

「ひとつの体に、ふたつの設計図」——キメラはどうやって生まれるのか

 キングス・カレッジ・ロンドンで法医遺伝学を研究するデニス・シンダーコーム・コート教授によれば、あの中国の被害者女性は「ヘテロゴニック・キメラ」と呼ばれる非常にまれなケースだったと考えられている。

 通常、受精は「1つの精子が1つの卵子に結合する」ことで始まる。だが極めてまれなケースでは、2つの精子がほぼ同時に卵子に到達することがある。そこで生まれる「3倍体」の胚はほとんどの場合、流産に終わる。ところが、ごくごく稀に、この異常な状態が生存可能な胚として育つことがある。2組の異なる精子由来の染色体が、卵子のそれとともに複製プロセスを生き延びるとき、混合DNA胚が誕生する。

「私たちの体内にはこれを防ぐための仕組みがあります。だからこそ、これは極めてまれなのです」とシンダーコーム・コート氏は語る。中国の被害者女性は、生まれながらにして「もうひとりの自分」を体の中に抱えていたことになる。おそらく、本人はそれを知らないまま生きていたはずだ。

皮膚が二色に分かれた女性、「我が子なのに血がつながらない」と訴えた母親

 キメラの存在が「見える」形で現れることはまれだが、ゼロではない。アメリカの歌手テイラー・ムールのケースは、その最も視覚的な例だろう。彼女の腹部の皮膚はちょうど真ん中で二分され、左右で色が異なっている。胎内で融合したはずの「双子の妹」のDNAが、文字通り表面に現れているのだ。他にも、左利きであること、異なる色の目を持つこと、複数の血液型を持つことが、キメラのサインとされることがある。

 だが、キメラがより深刻な問題を引き起こしたのは、法廷の場だった。2002年、アメリカに住むライディア・フェアチャイルドという女性が公的な育児支援を申請した際、頬の細胞から採取したDNAが「自分の子供たちとまったく一致しない」という鑑定結果が出た。彼女は詐欺の疑いをかけられた。

 法廷は異例の措置として、第三子の出産に立会人を送り込み、出産直後の血液サンプルを採取させた。それでも結果は「一致しない」。子供たちが養育機関に引き取られる寸前、一人の弁護士が類似ケースを描いた論文を読んでいたことで事態は動く。彼の要請で今度は子宮頸部から細胞が採取された。すると——ようやく、子供たちとのDNA一致が確認されたのだ。

 フェアチャイルドの場合、血液と唾液のDNAは「一方の双子」に由来し、生殖器官のDNAは「もう一方の双子」に由来していた。遺伝カウンセラーのカイラ・マンデル・シーツ氏はこう説明する。「彼女が妊娠するたびに、どちらの卵子が受精するかは確率の問題でした。ただ、毎回、消えた双子の卵子が選ばれたのです」。つまり、彼女の子供たちは「存在したことのない人間」の遺伝子を持っているということになる。

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「犯人のDNAが一致しない」——法廷が直面する”二重の真実”

 キメラの存在が法医学に与える影響は、フェアチャイルドさんのような親子関係だけにとどまらない。もし犯人がキメラだった場合、犯行現場に残されたDNAと、採取したDNAが別の遺伝子型を示す可能性がある。これは実際に法曹関係者の間で議論が行われているリアルな問題だ。ちなみに、この設定はアメリカのドラマ『CSI:科学捜査班』でも2004年に「Bloodlines」というエピソードとして取り上げられている。

 1980年代から「DNA鑑定のゴールドスタンダード」として使われてきたSTR分析(短鎖タンデムリピート解析)は、確かに強力なツールだ。しかし「二親等の血縁関係(たとえば叔母と甥)を直接識別することはできない」とシーツは指摘する。生物学的に言えば、フェアチャイルドさんは子供たちの「叔母」にあたる。STR分析がそれを見つけられなかった理由がここにある。

 ただし、技術は進化している。「今日の検査は感度がはるかに高く、種類も増えており、キメラを発見できる可能性も上がっています。フェアチャイルドのようなケースも、現代であれば見つかったでしょう」とシンダーコーム・コート氏は語る。将来的には一親等・二親等・三親等すべてを識別できる技術の実用化も視野に入っており、キメラによる冤罪や親権剥奪といった問題の解消につながると期待されている。

あなたも「キメラ」かもしれない——IVF普及が生む静かな変化

 実際のところ、キメラはどれくらいいるのか?シーツ氏によれば、大規模なコホート研究が実施されない限り正確な数字は出ない。推計によっては「10人に1人がキメラかもしれない」という数字もあるが、シンダーコーム・コート氏はそれを過大評価と見ている。「私は毎日血液サンプルを分析していますが、キメラを見たことはありません」。

 ただ、今後は増える可能性がある。体外受精(IVF)の普及により、複数の胚が形成されるケースが増えており、そのぶんキメラが生まれる条件も整いやすくなっているからだ。「IVFや排卵誘発剤の普及は、二卵性双生児の増加につながっています。論理的に考えれば、先天性キメラも増加していると仮定するのが自然です」とシーツ氏は述べる。

 DNAは万能の「身分証明書」ではなかった。だが、それが暴いた「消えた双子の残影」は、生と遺伝の境界がいかに曖昧で、いかに奇妙なものであるかを教えてくれるのだろう。

参考:BBC Science Focus、ほか

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