宇宙の最高責任者「ザ・ナイン」と交信する装置TD-100とは? 『スタートレック』にも影響を与えた1970年代のチャネリング実験

1970年代のニューエイジブームの渦中で、この宇宙の最高責任者である「ザ・ナイン」の声を聞くための技術開発に勤しんだ科学者がいた――。彼が開発した「TD-100」は今も「ザ・ナイン」の声を届けてくれるのだろうか。
■宇宙の最高責任者との交信装置「TD-100」とは
医療発明家、医師、そして超心理学研究者であった故アンドリヤ・プハリッチ(1918~1995)は、地球の地表と電離層の間で極超長波が反射し合い常に響き合っている周波数(7.83Hz)である「シューマン共振」と、人間が深いリラクゼーションや瞑想状態で発する脳のアルファ波の周波数との不気味なほどの一致に着目した。
そしてプハリッチはノイズを可能な限り除去し、シューマン共振の7.83Hzに合わせた受信機と脳を非侵襲的に繋ぐことで、人間の意識は通常であれば雑音に埋もれてしまう“本物の信号”を受信できるようになると考えた。
この発想のもとに開発された「TD-100」という装置は“本物の信号”を「正面玄関を通らずに脳に直接語りかける」技術を備えているのだと彼は説明している。

では“本物の信号”とは何なのか? それは「ザ・ナイン」と呼ばれるこの宇宙の最高責任者が発するメッセージであるという。TD-100と繋がった霊媒師が、地球の歴史や、人類を導く異星文明や高次の存在の役割についての「ザ・ナイン」からの詳細なメッセージを代弁するのである。
実験台に収まるサイズのTD-100の見た目は特に洗練されたものではなかったが、被験者の皮膚に装着する電極からの超低周波の感覚刺激や銅板の電磁波シールドなどによって意識状態を変容させる効果を持つ装置と見なされていた。
そもそもすべてのはじまりはプハリッチがヒンドゥー教の神秘主義者、ドゥンディラージ・G・ヴィノード(1902-1969)と出会ったことからはじまる。プハリッチが見守る中、チャネリングセッションを行ったヴィノードはトランス状態に入り、「ザ・ナイン」と名乗るグループと接触して交信をはじめたのである。
この「ザ・ナイン」は、現実を支配する力である「自然の9つの原理」を司る存在だという。
その後、フィリス・シュレンマーという著名な霊媒師が「ザ・ナイン」ときわめて頻繁にチャネリングを繰り返すようになり、地球の歴史や、人類を導く異星文明・高次の存在の役割についての詳細なメッセージを代弁した。彼女のチャネリングを目撃したプハリッチは「ザ・ナイン」の実在を確信し「ラボ・ナイン」と呼ばれる研究施設と組織を創設したのだ。
このTD-100とその後継機によるセッションが活発に行われるようになったのは、1960年代後半、特に1970年代に入ってからのことだった。
ニューヨーク州オシニングにある彼の邸宅に設置された「ラボ・ナイン」で行われていたセッションは長時間に及び、磁気テープに綿密に録音され、綿密なメモが書き残された。
セッションの主要な霊媒師は前出のフィリス・シュレンマーで、彼女を通じて「ザ・ナイン」の定期的な連絡役である「トム」が宇宙論、魂の本質、そして地球上の政治情勢について講義を行った。そのメッセージは独特な構成で、古代の神託のような厳粛な内容と、諜報機関の報告書のような具体的な内容が交互に現れた。
現存するセッションの記録の一つには、「トム」が人類は宇宙的な岐路に立たされていると警告する内容が記されている。この先の人類は集合意識へと進化するか、あるいはそれを設計した者たちによって「再起動」されるかのどちらかの道を進むことになるという。
「ラボ・ナイン」への訪問客の中には、カナダの財界の大物たち、ヨーロッパの貴族、スタンフォード研究所の科学者、そしてジェラルド・フォード大統領の個人的な友人もいた。
さらにはその数年後に殺人罪で有罪判決を受けることになる、カウンターカルチャーの指導者アイラ・アインホーンや、意識の量子物理学の概念を広めることになる生物医学エンジニア、イツァク・ベントフもいた。
そして1974年と1975年には「スタートレック」の生みの親である映画プロデューサーのジーン・ロッデンベリーも参加しており、その時の体験が後にスタートレックのスピンオフ作品『スタートレック:ディープ・スペース・ナイン』の誕生につながったといわれている。
残念ながらプハリッチは科学界からは何の評価も受けなかったが、晩年はソ連の電磁兵器やニコラ・テスラの遺産について執筆活動を続け、自分は主流科学ではまだ測定手段を持たない事象に取り組んでいるのだと最後まで確信していたという。
TD-100が何の成果も生み出さなかったと証明できる者はいないが、かといって機能したと証明できる者もいない。ともあれこのTD-100が遠隔透視実験や洗脳実験などと並び、冷戦時代の科学における最も奇妙な物語の一つを体現していることは間違いない。
参考:「Espacio Misterio」ほか
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