【聖書外伝”エノク書”の謎】富と権力で世界を支配するエリート層と「最後の審判」キリスト教が隠した”反キリスト”の正体とは?

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 反キリストとは誰なのか――。キリスト教からもユダヤ教からも除外された聖書外伝には反キリストを特定するための重要な描写がある。

■『エノク書』で描かれた反キリスト

 現代の聖書には旧約聖書と新約聖書を合わせて全66巻の正典がある。初期のユダヤ教徒やキリスト教徒の間ではほかにも多くの古文書が流通していたものの、その大半は正典から除外された。

 そうした聖書外伝の1つ『エノク書』には堕天使、巨人、そして悪魔の起源に関する最も初期の記述など、聖書の正典には含まれなかった物語が綴られている。その中には反キリスト(アンチキリスト)についての詳細もある。

 反キリストとは、キリスト教神学において、イエス・キリストに敵対し、世界の終末前に多くの人々を信仰から遠ざける邪悪な背信者であるとされている人物である。

 2200年ほど前に書かれた『エノク書』には、「王たちと力ある者たち(the kings and the mighty)」として知られる謎めいた強権をふるう支配者集団が描かれている。これこそが反キリストであるようだ。

 一部の専門家は、彼らは特定の人物ではなく、終末の前に神に敵対する腐敗した体制を象徴するものと解釈している。「王たちと力ある者たち」である反キリストは権力の支配構造そのものを指しているというのだ。

 これらの記述は『エノク書』の第二部である「比喩の書(Book of Parables)」に登場し、第46章から第63章にかけて記述されている。そこでは、メシア(Son of Man)が「王たちと力ある者たち」を裁く物語を描いている。

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エチオピア語版エノク書の冒頭部分 Public Domain, Link

 この物語は4つの展開から成り立っているという。

 最初の場面では、「王たちと力ある者たち」は、神を拒絶し、信者を迫害する裕福で影響力のある指導者として描かれている。

 二番目の場面では、メシアの到来が描かれ、支配者たちは自分たちが神に選ばれた者(=メシア)を否定していたことに気づくが、それはもう遅きに失していた。

 三番目は、鉄、銅、銀、金の山が溶けていく様子を描き、彼らが信頼していた富、権力、そして制度の崩壊を象徴している。

 最終章は劇的な「最期の審判」の場面で最高潮に達し、支配者たちはメシアの前に立ち、自分たちの行いの結果から逃れることはできないと悟る。

 YouTubeチャンネル「The Hermon Codex」の動画によると、最終章は富と政治的権力の上に築かれた近代的な制度の没落を表しているという。

「その日には、すべての王と力ある者、高貴な者、そして地を支配する者たちが立ち上がり、彼らは彼が栄光の玉座に座っているのを見て、それを認識するであろう」(エノク書62章3節)

 そしてその6節後には、エノク書は支配者たちが彼の手による慈悲を求めて「彼の前にひれ伏し、彼を崇拝し、嘆願し、懇願する」と記述されている。

 しかし彼らの嘆願は拒否され、彼らは屈辱にまみれることになる。

 神はその後、彼らを「神の子らと選ばれた者たちを虐げたので、罰を与えるために天使たちに引き渡し、彼らに復讐させる」と言い放つ。そして彼らは悔い改めることになる。

「我々の苦しみと悩みの日に、救われることはないだろう。私たちの罪は本当に数えきれないほど多いのだから」(エノク書63章10-12節)

 多くの学者は、この一節を、富、傲慢、抑圧の上に築かれた人間の帝国は揺るぎないものに見えるかもしれないが、結局は一時的なものであり、神の王国だけが永続するという教えであると解釈している。

 はたして現在の国際情勢は「王たちと力ある者たち」=反キリストが持てる限りの権力を振りかざしている“終末”なのか。だとすればこのまま“ハルマゲドン”から「最後の審判」へと至る道筋に向かうことはなんとしても阻止しなければならない。

参考:「Daily Mail」ほか

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文=仲田しんじ

場末の酒場の片隅を好む都会の孤独な思索者でフリーライター。
興味本位で考察と執筆の範囲を拡大中。
ツイッター @nakata66shinji

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