大型ハリケーンが3つ同時に並んだ! 気象学者も『デイ・アフター・トゥモロー』を連想した「観測史上最強クラス」のエルニーニョ

太平洋の上に、大型のハリケーンが3つ、横一列に並んだ。
衛星画像を見た気象学者が思い出したのは、地球が一夜にして氷河期に叩き落とされる映画『デイ・アフター・トゥモロー』の一場面だったという。もっとも本人は、あの映画は完全な作り話であって現実にはああいうことは起きない、とはっきり釘を刺している。
だが、映画のような破滅が来ないからといって、安心できる話でもない。2026年のエルニーニョは、記録が残る中で最強クラスになると予想されているからだ。
貿易風が止まるとき、太平洋の水温はひっくり返る
そもそもエルニーニョとは何か。鍵を握るのは、赤道付近を吹く貿易風だ。
平常時、赤道上では東から西へ向かう貿易風が絶えず吹いている。この風が海面の暖かい水を西側へ押しやり続けるため、太平洋の西側には暖かい海水が溜まり、逆に東側では深いところから冷たい水が湧き上がってくる。東は冷たく、西は暖かい。この東西の水温差こそが、太平洋の平常運転である。
ところが何らかの理由で貿易風が弱まったり、向きが逆転したりすると、この構造が崩れる。暖かい水を西へ押しやる力が失われ、本来なら冷たいはずの東太平洋の海域まで温まってしまうのだ。これがエルニーニョ現象と呼ばれる状態である。
厄介なのは、これが海の中だけの話で終わらないことだ。海面水温は上空の大気の動きを左右する。太平洋の水温分布が変われば、雨雲が湧く場所も、風の通り道も、まとめて位置がずれる。数年に一度の周期で訪れるこの現象が、太平洋から遠く離れた地域の天候まで揺さぶってきたのはそのためだ。
カテゴリー4と5が同時に発生、記録上初めての事態
その影響は、すでに目に見える形で現れている。
MyRadarのシニア気象学者マシュー・カプッチ氏は、東太平洋でカテゴリー4とカテゴリー5のハリケーンが同時に発生したのは、記録上初めてのことだと指摘している。
ハリケーンの強さを示すサファ・シンプソン・スケールにおいて、カテゴリー4は最大風速がおよそ時速209〜251km(秒速約58〜70m)、カテゴリー5はそれを超える最強区分だ。上陸すれば建物の屋根や外壁がまとめて吹き飛ぶ規模の暴風が、太平洋上で同時に2つ渦を巻いていたことになる。
熱帯低気圧が発達するための燃料は、暖かい海面から立ちのぼる水蒸気と熱である。エルニーニョによって東太平洋が広く温まれば、その燃料タンクが平年より大きく膨らむ。大型のハリケーンが3つ並ぶという光景は、その帰結として説明がつく。
冒頭の映画の話に戻れば、カプッチ氏はあくまで「あの映画のワンシーンに似ている」と述べたにすぎない。一夜で北半球が凍結するような展開は、現実の気象物理では起こり得ない。彼が示したのは、現実の空がフィクションの絵面に追いついてしまったという皮肉のほうだ。
干ばつの国と、洪水の国が同時に生まれる
では、現実に警戒されているのはどんな被害なのか。
想定されているのは、極端な乾燥と極端な降水が、同じ時期に別々の地域で同時多発するという展開だ。オーストラリア、ベトナム、ラオス、カンボジア、タイでは干ばつが懸念されている。一方、ネパール、モンゴル、中国西部では洪水のリスクが指摘されている。
一方は水が来ず、一方は水が引かない。過去のエルニーニョでも、東南アジアやオセアニアの乾燥と、他地域の豪雨が同じ年に重なる構図はたびたび観測されてきた。
『デイ・アフター・トゥモロー』が描いたのは、既存の気象がすべて破壊されて別のものに置き換わる世界だった。だが現実に進行しているのは、これまで通りの気象パターンが、そのまま両極端へ引き伸ばされていくという事態である。乾く場所はより乾き、降る場所はより降る。仕組みは変わらないまま、振れ幅だけが大きくなっていく。
派手さがない分、こちらのほうがたちが悪い。空から氷の壁が降ってくれば誰もが異常だと気づくが、干ばつも洪水も「例年より少しひどい年」の顔をして訪れるからだ。
観測史上最強クラスという予想が外れることを願いたいが、太平洋にはすでに3つの巨大な渦が並んでいる。次に振り切れるのが、どの地域の目盛りなのかは、まだ誰にもわからない。

参考:LADbible、ほか
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