【TOCANA的UMAファイル #21】「モッシー」 ── 千円札の湖の怪獣は、15年で10倍に育った

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 1972年、山梨県・本栖湖で目撃された“怪魚”は、体長3メートルだった。15年後の1987年、同じ湖で撮影された“怪獣”は、体長30メートルになっていた。成長期にもほどがある。しかもこの湖、野口英世の千円札の裏で、日本中の財布に収まっていたあの湖なのである。

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基本データ

名前:モッシー(Mossie)

生息地:山梨県富士河口湖町・本栖湖。富士五湖の最も西にあり、最大水深は120メートルを超えて五湖でいちばん深い

初出:1970年代のはじめ。1972年には新聞が“怪魚”騒動を報じている

姿:3メートル級の巨大魚とする証言から、ワニのようにゴツゴツした背中を持つ30メートル級の怪獣まで、驚くほど幅がある

由来:本栖湖の「モ」に、あの「ネッシー」をかけた命名

事件簿

 最初の騒ぎは1972年の夏だった。同年8月31日の毎日新聞には「本栖湖、大さわぎ 体長三メートルの怪魚を見た!?」の見出しが躍った。この年には、早朝に湖畔を散歩していた人が、湖面が泡立って大きな背びれが現れ、岸から50メートルほどのところまで近づいてきたのを見た、という話も伝わっている。

 1970年代には捕獲作戦も試みられたそうだ。静岡・焼津港の漁師がマグロ用の網を湖に仕掛けたところ、翌日引き上げた網は無残に引き裂かれていたという。マグロ用の網を破る淡水魚。この時点で、すでに話の規模がヤバい。

 そして1987年10月3日の早朝。アマチュアカメラクラブの一行が、本栖湖の北岸から赤富士を狙っていた。そのとき沖合の湖面に、ワニの背のようにゴツゴツした黒い隆起が現れた。全長はおよそ30メートル。一行はとっさにシャッターを切り、物体はほどなく頭から水中へ潜っていったそうだ。写真は10月13日の山梨日日新聞で報じられ、本栖湖は再び怪獣騒ぎに沸いた。

ホントカナ?

 正体候補として最もよく挙がるのは、かつて放流されたチョウザメが巨大化したという説だ。ほかにアオウオやソウギョといった大型魚を挙げる声もあり、懐疑派なら波や流木の見間違いと言うだろう。ただしチョウザメ説は、いつ誰が放流したのか、紹介記事をいくら読んでもはっきりしない。

 どの説を採っても、最後にあの数字が立ちはだかる。体長3メートルなら、巨大魚説でもまだ説明がつくかもしれない。だが30メートルとなると話は別だ。そのうえ土産物に描かれたモッシーは首長竜の姿だったそうだ。目撃証言は魚、写真はワニ、グッズは首長竜。この怪獣は、語り継がれるほど姿を変えてきた。

 近年、この湖で本物の“想定外の大型魚”が見つかっている。2022年11月、釣り人が釣り上げた魚が北米原産のレイクトラウトだと確認されたのだ。国内では栃木県の中禅寺湖に続く2例目である。県水産技術センターが1年かけて刺網を26回仕掛けたところ175尾が捕れ、最大のものは全長92.5センチだった。大きさがまちまちなことから、すでに湖の中で自然繁殖が進んでいると強く疑われている。つまり本栖湖は、1メートル近い肉食魚が相当数すみつき、繁殖まで進んでいても、釣り人の竿にかかるまで誰も気づかないほど深い湖だった。

 ちなみにその網はレイクトラウト向けの目合いで、マグロ網を引き裂いた相手を捕まえるためのものではない。30メートルの影が湖のどこかに潜んでいないと言い切れる人は、まだいないのだ。

TOCANA的まとめ

 本栖湖は、日本でいちばんカメラを向けられてきた湖のひとつかもしれない。千円札の逆さ富士は、写真家・岡田紅陽が湖畔の中ノ倉峠から撮った一枚が元になっている。モッシーを撮ったのも、赤富士を狙っていたカメラマンたちだった。誰もが富士山を撮りに来る湖で、怪獣はいつも、その画面の片隅に現れる。

 しかもこの湖には、もともと“主”がいた。富士山が噴火したとき、湖の竜が湖畔の山に駆け昇って村人に危険を知らせた、という伝説が残る。その山は以来「竜ヶ岳」と呼ばれるようになったそうだ。湖の底に何かがいる。そんな感覚は、この土地では1970年代よりずっと前から続いてきたのである。竜ヶ岳の山頂からは、年末年始の数日間だけ、富士山頂から昇る朝日「ダイヤモンド富士」が拝める。カメラを構えるなら、ついでに足元の湖面も見ておきたい。

トリビア

 本栖湖は、隣の精進湖・西湖と湖底でつながっているという説がある。三つとも富士山の溶岩がせき止めてできた湖で、湖面の標高はほぼ同じ。西湖の水を水路で河口湖へ流すと、精進湖と本栖湖の水位まで下がるとも言われる。モッシーが三つの湖を行き来しているとすれば、たまにしか姿を見せないのも納得がいく。

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