呪いの「ミイラ王女」! 実はマリファナ漬けのシャーマンだった!
ロシア紙「シベリアタイムズ」は、22年前にロシアのアルタイ共和国で発見されたミイラが、このほど「ある事情」により発掘現場へ戻されることになったと伝えている。
■2,500年前の「アルタイの王女」のミイラ
1993年、モンゴル、中国、カザフスタンとの国境にあるロシア・ウコク高原で、2,500年前の女性ミイラが発掘された。永久凍土により抜群の保存状態の彼女は、のちに「アルタイの王女」と呼ばれるようになる。
発見当時、王女は6頭の馬と2人の男性と共に埋葬されており、推定年齢は25歳くらい。頭髪を剃り落し、木製のシカのチャームがついた馬毛のウィッグを被っていた。ほぼ白骨化していたが左肩と腕には皮膚が残っており、驚くべきことにタカのくちばし、ヤギの角、シカの頭などのタトゥーが施されていたのだ。中国製シルクのドレスやフェルトのブーツ、毛皮のコートを身にまとい、ゴールド、ブロンズの装飾品や化粧ポーチも出土した。当時、中国製シルクはゴールドより価値があり王族の葬礼でのみ使用されたことから彼女の社会的地位の高さが伺い知れた。だが謎が残る。王族の埋葬にしては質素過ぎるのだ。
2014年、この長年の謎を解くのに一役買ったのがMRI画像診断だ。ロシア医学アカデミー生理学研究所のアンドレイ・レチャギン氏は「(落馬による)全身の損傷が確認できるが、彼女の直接の死因は乳がん」と話す。MRIには右胸に初期の腫瘍、右腋窩リンパ節への転移がはっきりと映っていた。20歳頃に乳がんを発病し、5年ほどかけて進行していったものと考えられる。そして彼女がウコン高原に辿り着いたときには乳がんは末期状態となり、激痛とそれを緩和するための薬物の常用で体力を消耗していたと推測される。そんな状況の中、落馬し大怪我を負ったというのがレチャギン氏の見解だ。しかし何故、冬のウコク高原へ末期がん患者が馬に乗って出かける必要があったのだろうか?
■今なお続く「王女の呪い」
実は、彼女は「王女」と呼ばれているが、実際にはシャーマンだったのではと考えるのが妥当のようだ。その独特の服装、タトゥーはシャーマンにこそ相応しいとも言え、加えてミイラの石室からマリファナが出土したのだ。これは痛み止めとして自らが処方したものと思われる。ミイラの発見者である考古学者ナターリヤ・ポロスマク教授も「サイエンス・ファースト・ハンド」誌に「この重病女性は、痛みを鎮めるためにマリファナ吸引が欠かせなかったはず」と発表している。
おそらく、麻薬による幻覚状態の中にいた彼女を同部族の人びとは「祖先の霊と交信が出来る」特別な存在と見なし、集団の利益に不可欠な人物として死ぬまで大事にしたのだろう。埋葬様式も王家とは異なるが、それに準ずる形なのも説明がつく。
こうして2,500年前のミイラの身元は解明されつつあるのだが、発掘現場へ戻されることになった「ある事情」とは何だろう? これがなんと「王女の呪い」というのだ。アルタイ山脈では今なお彼女の神通力が続いていると信じられている。実は彼女が発掘されてからアルタイの地では次々と不幸が起きている。ミイラ輸送が何度も延期になったり、悪天候でヘリが墜落しかけたり。気象災害や不作、近隣の村々での自殺、病人の急増など。特に2003年のチュヤ地震では、地すべりや洪水で1,800人が家を失った。
実は、当初から村の長老たちは王女の輸送に反対だった。というのも遺体はオチ・バラ(黄泉の国の入口)を塞ぐ役目であり、彼女がいる限り死者の世界への入り口が閉じられているわけで、現在はエントランス全開らしい。
今年、ウコク高原に大霊廟が建設され改葬が予定されている。王女の魂が少しでも慰められることを祈ってやまない。
参考:「Daily Mail」、「Siberian Times」、「Huffington Post」ほか
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