カプグラ症候群 ― 親しい人が「見知らぬ他人」と入れ替わったように感じる悲劇の病、原因やキッカケは?

 同居していれば当然毎日顔を合わせることになる家族やパートナーだが、何らかのタイミングでこれらの身近過ぎる人が、いつもとちょっと違う感じがしたなんてことはないだろうか。もちろん髪形を変えたりといった“イメチェン”が理由の場合もあるだろうが、精神医学の分野では身近な人物が“ニセモノ”であると思い込む「カプグラ症候群」という世にも珍しい症例が報告されている。


■親しい人が“ニセモノ”になる謎の「カプグラ症候群」とは

カプグラ症候群 ― 親しい人が「見知らぬ他人」と入れ替わったように感じる悲劇の病、原因やキッカケは?の画像1在りし日のマーティさん(左)とキャロルさん(右) 「Express」の記事より


 結婚から40年間、寝食を共にしてきた高齢者カップルに、その悲劇は突然やってきた。

 いつものようにニューヨーク・セントラルパークを一緒に散歩していたカップルだったのだが、夫・マーティーさんが少し離れたところを歩いていた女性に向かって妻の名を叫んだのだ。「キャロル、こっちへおいでよ!」と。

 この奇行に驚いたキャロルさんは、夫の顔を覗き込み「私はここにいるわよ」と言い聞かせたのだが、驚いたことにマーティーさんは目の前にいるキャロルさんは自分の妻でないと否定したのだ。この時以来、不幸にもカップルの関係は引き裂かれることになる。

 マーティーさんのこの不思議な症状は「カプグラ症候群」と呼ばれるもので、その発生原因は今もって謎である。運命のいたずらか、キャロルさんはニューヨーク大学の精神科の助教授として、カプグラ症候群の患者数人の治療に携わっている。そして自分の夫がキャロルさんの新たな患者になってしまったのである。

カプグラ症候群が私たちの仲を完全に引き裂きました。その症状は愛する人との絆を断ち切る恐ろしいものだと身をもって再確認しました。夫は私のことを人生を妨害する侵入者か見知らぬ他人だと考えて接触を拒絶します」(キャロル・バーマンさん)

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