幽霊が出没する路線の駅員に聞いた“本当にあった怖すぎる話”! 川奈まり子の実話怪談~終着駅の女~』
数日後、再びAさんとBさんの仮眠時間が被ることになった。
前回と同じように、Bさんが先に仮眠室に入り、その約3時間後にAさんが寝に行くことになるシフト構成だ。
Aさんは、なんとなく厭な予感がした。また見てしまうのではないか、と
でもBさんには言えない……と思っていたら、Bさんの方から話しかけてきた。
「なあ、仮眠室の電気、点けて寝ていいか?」
Aさんはドキリとして、理由を訊ねた。するとBさんは、声を低めて、
「あの部屋、なんとなく薄気味悪くないか? 俺は寝る度に、そこはかとなく厭な感じがするんだよ」
と、彼にしては意外なことを打ち明けてきた。
なぜ、どんなふうに厭な感じがするのか教えてもらいたいとAさんは思ったが、元々どちらかと言えばBさんとは気が合わない方だった。だから空気を読んで、「いいですよ」と答えるだけに留めたのだという。
そして深夜――Aさんが仮眠室に行くと、シーリングライトに煌々と照らされた室内で、Bさんはカーテンで囲ったベッドで眠っていた。
珍しいこともあるものだ、と、カーテンの隙間からBさんの寝顔を窺って、ギョッとした。
Bさんの後ろに何か、いる。
胎児のように、Bさんは体をまるめて横たわっている。その背に、何者かが覆いかぶさっているのだ。
胴に細い腕を巻きつかせ、肩先に頬を寄せて、ひどく親密なようすで、同衾している恋人同士さながらだが、Bさんの背中にいる女は、半ば透き通っていた。
――こないだの女だ!
Aさんは歯の根も合わないほど震えあがり、大慌てで仮眠室から逃れた。
「Aさんは、Bさんと勤務が同じ日は、食堂のソファーで寝ることにしたそうです」と岡田さんは言った。
だから私は、鈍感なBさんと、怖がりなAさんの対比にユーモアを感じて、思わず笑顔になったのだ……が。
「ここから先のことは、川奈先生に話すべきか否か悩んだのですが」
と、岡田さんが、急に声の温度を下げたのだった。
「……このAさんですが、 数年前に亡くなりました」
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