沖縄の霊能者「ユタ」を祖母に持つ男性の数奇な体験談 政治家も通う凄腕ユタがいる家庭の非日常

 「医者半分、ユタ半分」。沖縄では古くから民間信仰カウンセラーとして霊能者「ユタ」が受け入れられてきた。ユタとは、女性の霊能者であり、男性は「トキ」という。トキとは時代や戦況の流れの「時を読む者」である。琉球王朝時代、国策に携わる参謀・軍師のような仕事をした男たちだ。現代の「トキ」になるべく修行する霊能者・高江洲氏に話を聞いた。

――高江洲さんのおばあさまがユタと聞きましたが?

高江洲康之(提供:本人)

高江洲康之(以下、高江洲) 祖母は沖縄で20番目のユタでした。沖縄のユタとは、いわゆる神ダーリ(神憑かり)して、霊が視えるようになり、頭の中で声が聞こえるようになって、それに逆らえずに行動するようになって、結果、修行に進み、拝み屋、霊能者として暮らしていく人々のことです。いわば民間の霊能カウンセラーとでも言いましょうか。祖母は協会に登録された20番目のユタでした。ユタの「協会」は、連絡会議のようなもので、新たなユタが修行して、祓いや拝み、御願(ウガン)などの一定の経験を積んだのち、その道の先達が新人を認めて認定証を発行するんですね。要するに免許皆伝、20番目の認定されたユタが祖母でした。

 ですから幼いころから心霊オカルトなどの不思議なものは当然のこととして受け入れて育ったんです。その点、偏見や壁もなく、そういった世界もあるんだろうと思っていました。

――ユタの「家族あるある」を教えてください。

高江洲 たとえば祖母が「いまから誰々さんから電話くるから、『おばぁはいない』って言いなさいね」と言われると、本当に電話がなるんです。または何時に何々さんが訪ねてきても「出かけた」と不在を伝えるように言われて、本当にその時間に人が来る。いわば予知能力です。黒電話の時代ですからね、不思議だなと思ってました。そういうことは、よくありました。ウチでは普通の日常でしたけど、やっぱり他の家庭からみると異常かもしれません(笑)

自宅の祭壇(提供:高江洲康之)

 小学生の頃、祖父母と寝ていて、夜トイレに行くのが怖くて、祖母を起こしてトイレまで着いて来てもらうこともあったんですが、後ろに足音がするから祖母が来てくれてると思って安心して用を足して戸を開けると誰もいない。驚くし怖いし、走って寝室まで戻る。すると祖母は寝ているので怖くて聞いたら「アレは違う人よ」と。いや、誰なんだ(笑)

 祖母はユタが相談しにくるユタでしたから、こんな不思議なことは日常茶飯事でした。

――政治家も相談に来ていた?

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