アパートの巨人女、マッサージ嬢の呪い 「タイぐるり怪談紀行」著者インタビュー(前編)
2021年、トカナで「タイホラー通信」を連載したタイ在住歴20年のバンナー星人が、10月8日にタイならではの怪談39本を収録した『タイぐるり怪談紀行』(アプレミディ)を上梓した。一体どんな恐ろしい話が収録されているのだろうか? 緊急でインタビューを行った。

——39話で惨苦の怪談ですか……
(バンナー星人) いえ、そういう意味では(笑) 言われてみれば、たしかに惨苦ですね。実はタイでは「9」は良い数字なんです。「カオ」といって、前進/進歩する、といった言葉と同じ発音なので、縁起のよい数字とみなされています。
——なるほど、そういう意味でしたか(笑)。「ぐるり」というのはタイを一周するということですか?
(バンナー星人) まず首都バンコクから始めて、世界遺産アユタヤ遺跡のある中央部・西部、チェンマイなどのある北部、メコン川沿岸部をふくむ東北部、リゾート地パタヤのある東部、そして南部プーケットなど、タイの怪談を集めて収録しています。
どれもタイらしい話ですが「マッサージパーラー嬢と呪術」は、タイにセクシャルな遊び目的で来たことがある人には読んでもらいたい話です。そこまで可愛くもキレイでもないのに、なぜか金持ち欧米人の客がつく女性の話です。秘密は呪術なんですよ。身に覚えのある人は、「もしかして呪術の罠にハメめられていた?」と感じられるかもしれません。

——タイホラーはNetflixでも注目されていますね。
(バンナー星人) 話題になった映画『女神の継承』でも描かれたように、タイでは「目に見えるもの/そうでないもの」の境界線が日本より曖昧なんです。心霊、呪術、前世のカルマといった話が日常生活に溶け込んでいる。「前世のカルマのせいで恋人ができないと占い師に言われたから、お寺でタンブン(喜捨による徳積み)しなくちゃ」「昨日もまた霊を見てしまって」なんて話をランチ食べながら当たり前にしてしまう。私の勤務先である高校の職員室もそんな感じですよ。欧米や日本とは違う社会的状況が根底にあること、それがタイホラーの魅力かもしれませんね。
——日本とタイで怪談に違いはありますか?
(バンナー星人) タイの心霊現象は「圧倒的物理!」なんですよ。蹴とばしたら感覚があるくらい物理的です。先日テレビのニュースにも取り上げられましたが、駐車場のレスキュー隊ワゴンが、勝手に前進して他の乗用車を押しのけた話があります。車内は無人で、傾斜のない土地、ブレーキもしていたと。タイの心霊現象って、これくらい物理的なんですよね。
また日本との違いは、タイでは霊感のある人や宝くじが当たる人の話が本当に多いことです。クラスに一人は霊感のある子、視える子がいる。宝くじがよく当たる人も、知り合いレベルでは何人もいる。たとえば、友人が事故に遭う夢を見た。すると彼はその友人に「夢でみた、お前のバイクのナンバーを教えてくれ」と電話をして、なんとそのナンバーで宝くじを当ててしまう。「事故の心配をするんじゃないんかい!」とツッコミたくなる話ですが、そんな小話はタイ人ならば誰でもいくつか持っているんです。
——なんだか煩悩まみれですが仏教とは共存できているんですか?
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