変死、歩く呪物、風呂で茹ダコ 「タイぐるり怪談紀行」著者インタビュー(後編)
2021年、トカナで「タイホラー通信」を連載したタイ在住歴20年のバンナー星人が、10月8日にタイならではの怪談39本を収録した『タイぐるり怪談紀行』(アプレミディ)を上梓した。一体どんな恐ろしい話が収録されているのだろうか? 緊急でインタビューを行った。
——取材中に心霊体験などは?
(バンナー星人) タイに住んでいると、そんな話をよく聞くし、「自分にも見えるかな?」と期待するんですが、そんな経験はないですね(笑)。
実際、目撃現場に居合わせたこともあります。でも幽霊やその類が視えたことはないです。たとえば本書で紹介している「学校の怪談」なんかもそうです。これは私が務めるバンコクの学校での実体験です。
ある生徒が「友人の誕生日をサプライズで祝いたいから協力して」と頼んできたので手伝ったんです。しかしケーキを渡す場面になって、頼んできた生徒の一人が泣き出して、ケーキを渡して出て行ってしまった。後から聞いた話によると、泣いた生徒は、いわゆる「視える」子だったようで、ケーキを受け取った生徒の後ろに、禍々しい顔をした女の霊がぬぅっと覗きこんでいたと。それで怖くて泣いて逃げてしまった。いや、泣きたいのはサプライズで誕生日を祝ってもらった生徒ですよね?(笑)。このように現場に居合わせても、私には何も見えていないんです。
——本当に霊感が強いと逆に何も視えないともいわれていますが……
(バンナー星人) 以前変わった友人がいました。「なんで視えてるのに、視えてないフリしてるの?」って言ってくるんです。なぜか興味を持たれ、気に入られてしまって。仲良くはなったんですが、私は視えてないので、結局、疎遠になってしまった。ただ、この人Aさんは能力が高い人のようでした。
あるとき、私の親友F子がAさんに「ウチを見て」と頼んできた。当日、AさんはF子宅に入るなり咳き込み出して。「絶対ここだけは無理、イヤ」と、風呂場に近づきもしない。それを見たF子はニヤニヤしながら「やっぱりわかる? この風呂場、おじさんが泥酔したまま入浴して、そのまま茹でダコになって死んでたんやで、アンタやっぱりすごいな」と言う。いや、知ってて試したんかい! 正直、一切気にせず、その風呂を使い続けるF子の方がAさんよりすごいですけどね(笑)。
また、今まで「コイツ、ろくな死に目に合わないだろうな……」と私が感じた人間が過去に数人変死しています。コレ言うとドン引きされるんですけど、もちろん偶然ですよ?
ただ事実として亡くなった全員が、いわば自分で毒を吐きながら、その毒に侵されるような人でした。一人は音信不通になって数年後、淀川に浮いてました。もう一人は最近のことで、自宅の階段で眠るように死んでいたのを発見されました。こんな話をすると、「嫌われたら呪い殺されるから気をつけよ」と、からかわれますけどね。
——歩く呪物じゃないですか…
(バンナー星人) いや、私が何かしたわけでは(笑)。ただ、やはり因果応報じゃないかなと。「こんな最期でもおかしくない」と思える人ばかりが変死しているので。
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