「昭和天皇」服はツギハギ、家はボロボロ!? 超絶倹約伝説

画像はWikipediaより引用

 天皇陛下あるいは皇室に対して、豪華絢爛で煌(きら) びやかなイメージを抱いている人は少なくないようだ。まるで中世ヨーロッパの貴族のように、毎日社交界に明け暮れ贅沢三昧の日々を送っている、毎日が休日のような生活であると思っている人も少なくはないらしい。しかし、それらは誤ったイメージであり、現実には国内の巡行や国賓の接受、そして国民行為の臨席などその内容はきわめて激務といえるほどで ある。

 特に、昭和天皇の生活はきわめて倹約的であったと言われている。これは、昭和天皇が幼い頃に学習院院長の乃木希典から「質実剛健」と「質素倹約」 を叩きこまれたことに由来すると言われている。その指針を生涯貫いたと言われる昭和天皇の立ち振る舞いは、いかなるものであったのだろうか。

 例えば、学習院初等科時代に昭和天皇が着用していた「正服」は、現在学習院大学資料館で展示がなされている。きわめて良好な保存状態ではあるのだが、一方でつぎはぎが多く見られているという。これは「 穴の開いている服は着てはいけない、しかしつぎのある服を着ることは全く恥ではない」 という教育係であった乃木の影響によるものと言われており、この教えの通り昭和天皇は、 穴の開いたものを侍女につぎをあてるよう頼んでいたという。

 質素な生活を送っていたと言われる昭和天皇であるが、 近年になって特に注目されたのは住居についてである。

 第二次大戦中、昭和天皇は皇居内の明治宮殿を住居としていた。明治宮殿は、旧江戸城西の丸の跡地に建設された宮殿であり、明治17年に着工、明治21年に竣工された。昭和11年には、宮内省第2期庁舎が立て替えられた際には、「防空室」 と呼ばれる避難部屋が設けられていたが、大型爆弾に耐える設計ではなかったために、新たな防空施設として「御文庫」(ごぶんこ)が完成された。昭和天皇は午前中を表御座所で政務を行ない、午後はこの御文庫で過ごしていたという。御文庫は平屋建築ではあるが、地下1階と2階があり、居住スペースや侍従たちの部屋や娯楽室が設けられていた。さらに戦局が悪化するにつれて、御文庫のそばにさらに新しく「御文庫附属室」が作られることとなった。 地下10メートルで広さ330平方メートル、壁の厚さも1メートルのコンクリートで覆われたこの附属室は、1945年の6月ごろに完成したのである。

 だが、附属室の完成に先立った頃、焼夷弾によって明治宮殿が全焼してしまった。それ以降、 昭和天皇は宮内省第2期庁舎を借り宮殿として、居住は御文庫という状況になった。御文庫は、 爆弾に耐えうる設計ではあったものの、溶けた積雪によってコンクリートから水がしみ出しており、さらに地下の附属室からの湿気も相当にひどいものであり、スーツを吊るしておくと一晩で湿ってしまうほどであったという。

 侍従たちは、こんなところで陛下を生活させてはいけないと住居の新設を呼び掛 けるが、昭和天皇は「住む家の無い人もいるのに、私にはこれだけのものがある」と言って却下したのだという。 せめてということで修理調査をした時には、天井裏からドラム缶2本半分の水が出てきたとも言われている。 世間が皇太子殿下のご成婚に湧き立った1959年当時も両陛下は 御文庫に居住しており、それから2年後、敗戦から16年ほど経過して新造された吹上御所にようやく移ることになった。近年にこの御文庫は公開されるようになったが、特に感慨からの反響が強く、天皇ともあろう存在がこんなところに住んでいたはずがないとフェ イクニュースを疑われたこともあったという。

 昭和天皇の思想の中には、叩き込まれた教育もさることながら、つねに国民生活を念頭に置いた思いがあったのだろう。晩年、病床に伏していた際には、自分の体調よりもまず「 米の具体はどうだ」 と農作物の心配をつぶやいたという話もあるほどだ。人間的な慎ましさを考える上で、 昭和天皇のこうした生活ぶりは大きな指標になるのではないだろう か。

【参考記事・文献】
明治宮殿の世界
昭和天皇 ご愛用の「正服」に秘められた「質素倹約」の真髄
昭和天皇が過ごしたボロボロの御所
日本国民を愛するあまりボロボロの宿に住み続けた天皇

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【文 ナオキ・コムロ】

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文=ナオキ・コムロ(ミステリーニュースステーションATLAS編集部)

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