巨人ネフィリムは存在していたのか? “カーディフの巨人”とは…発見、そして偽装
旧約聖書に登場する巨人、ネフィリムはかつてこの地球上に存在していたのか――。1869年に米ニューヨーク州カーディフ近郊で石化した巨人が発掘されたのだ。
■“カーディフの巨人”騒動の一部始終
1869年10月ににニューヨーク・カーディスで発見された“カーディフの巨人”は、身長3メートルの石化した巨人で、話題を聞きつけたキリスト教徒たちが、旧約聖書のネフィリムの石化した遺体をひと目見ようと全米から殺到するフィーバーが起きている。
当時の人々がこの“発見”をどう受け止めていたのかはわからないが、現代の我々の目から見ればどうしたって疑惑が拭い去れない。
事実、この“カーディフの巨人”は巧妙に仕組まれた金儲けのための謀略であった。
葉巻職人で頑固な無神論者だったジョージ・ハルは1866年にメソジスト派の牧師と激しい口論を交わしたのだが、その中で牧師は大洪水以前に登場する巨人について言及したことで、ハルの頭の中にあるアイデアが生まれたのだった。
ハルはこの奇妙な計画を実行するため、1868年に巨石を探して入手し、秘密を守ることを誓った優秀なドイツ人の石工に巨人の彫像を彫らせたのだ。
完成した巨人の彫像は身長約3メートル、重さ1360キロで、ハルと共謀者の従兄弟は1868年11月にニューヨーク州カーディフ某所でこの彫像を秘密裏に地中に埋めたのである。
1年後の1869年10月16日、ハルは井戸を掘る目的で雇った2人の作業員たちに現場を掘らせ、“カーディフの巨人”が発掘され大々的にニュースになったのだ。
ハルは現場に大きなテントを張って見世物小屋にし、この“カーディフの巨人”を1人25セントで見せる興行を首尾良くスタートさせた。全米から見物客が殺到したことで、ハルはすぐに入場料を2倍にした。見世物小屋をはじめて最初の3週間で、4000人以上が見物に訪れたという。
こうして好評を博した“カーディフの巨人”なのだが、その二番煎じを狙おうとこの時期、ざまざな“巨人”がアメリカ各地で“発見”され、さながら“巨人ブーム”が巻き起こっていた。
このブームに苦言を呈する声もあがった。コーネル大学の初代学長、アンドリュー・ホワイト氏をはじめとする識者からは疑問の声が発せられ、エール大学の古生物学者、オズニエル・C・マーシュ氏は巨人像を偽物だと非難し、この像はおそらく最近作られたものだと指摘した。
急激に立場が危うくなったジョージ・ハルは同年12月10日に“カーディフの巨人”が偽造したものであることを案外あっさりと白状したのである。
その後、ほかの巨人像も次々と偽物であることが暴露され、一時的な熱狂をもたらした“巨人ブーム”はあっけなく終焉を迎えることになったのだ。
紆余曲折を経て現在、“カーディフの巨人”はニューヨーク州クーパーズタウンのファーマーズミュージアムに展示されている。
無神論者が宗教を利用して金儲けをしたことになるが、ジョージ・ハルにしてみればこの一件はキリスト教徒が物事を簡単に信じすぎる傾向があることを証明したことにもなり、ひょっとすると愚かな信者にまんまと一杯食わせてやったという、ひそかな“成功体験”になっているのかもしれない。
参考:「Anomalien.com」ほか
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