なぜ“一切の記録”がないのか? 謎の巨石建造物「ドラゴンの家」― 失われた歴史のミステリー

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 ギリシャ、エーゲ海に浮かぶエヴィア島。この風光明媚な島には、考古学の世界で最も不可解な謎の一つとされる建造物がひっそりと佇んでいる。その名も「ドラゴンの家(Drakóspita=Dragonhouses)」。

 接着剤となるモルタルを一切使わず、巨大な石灰岩のブロックを積み上げて作られた25の建造物群。一体、誰が、いつ、何のためにこれほど巨大なものを築いたのか。古代の文献に一切の記録はなく、その起源は完全に謎に包まれている。これは、ギリシャの歴史に隠された、壮大なミステリーへの招待状だ。

超人(ドラゴン)が築いたとされる巨石建築

「ドラゴンの家」という名前は、決して神話上の竜に由来するものではない。そのあまりに巨大な石のブロックを見て、地元の人々が「これは人間の仕業ではない。超人的な力を持つ“ドラゴン”のような存在が築いたに違いない」と信じたことから、この名が付けられた。

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 これらの建造物は、巨石を隙間なく積み上げる「サイクロプス様式」で建てられている。特に保存状態が良いとされるオヒ山山頂のドラゴンの家は、平均的なサイズが12.7m×7.7m、壁の厚さは1.4mにも達する。そして最も驚くべきは、入り口の上部に置かれた一枚岩の楣石(まぐさいし)だ。その重さは、なんと推定10トン。現代の重機なしに、どうやってこれを持ち上げたのだろうか。

 屋根もまた、巨大な石板を巧みに組み合わせてピラミッド型に作られており、中央には採光のための隙間が設けられている。その精巧な技術は、古代ギリシャの神殿建築を彷彿とさせるが、その正体は全くの不明なのだ。

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時間の迷宮―建造年代を巡る大論争

 この建造物の最大の謎は、「いつ作られたのか」が全くわからないことだ。1797年にイギリスの地質学者によって発見されて以来、数多くの研究が行われてきたが、建造年代を特定できる決定的な証拠は見つかっていない。

 いくつかの仮説が提唱されているが、その年代には数百年単位の大きな隔たりがある。

・紀元前7世紀説: 後のギリシャ神殿の原型となった、原始的な宗教施設だったとする説。
・紀元前3~4世紀説(ヘレニズム時代): 見張りや防衛のための砦だったとする説。1959年の発掘調査では、この時代の土器片が発見されているが、建造物自体がこの時代に作られたという証拠にはなっていない。
・紀元前1100年説: 近年の天文学的研究によって浮上した、最も古い年代を示す説。

 これほど重要な建造物であるにもかかわらず、ヘロドトスをはじめとする古代ギリシャの歴史家たちの記録に、ドラゴンの家に関する記述は一切存在しない。まるで、歴史から意図的に消されたかのようなのだ。

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星空に向けられた謎の視線―天文台だったのか?

 建造年代の謎をさらに深めているのが、2000年代に行われたアテネ大学の天体物理学者たちによる調査だ。彼らがオヒ山のドラゴンの家の向きを分析したところ、驚くべき事実が判明した。

 この建造物は、紀元前1100年頃、夜空で最も明るい恒星であるシリウスが昇る方角を正確に向いていたのだ。この発見は、ドラゴンの家が単なる住居や砦ではなく、星々を観測するための古代の天文台だったのではないか、という新たな可能性を示唆している。

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 さらに、発掘調査では未知の文字が刻まれた遺物も発見されており、この建造物を築いた人々が、我々の知らない独自の文化を持っていた可能性も浮上している。

 ドラゴンの家は、ただの古い石積みではない。それは、古代ギリシャ建築の進化の鍵を握り、失われた歴史の一片を今に伝える、生きた謎なのだ。巨石を動かした驚異の技術、文献から消えた理由、そして星空に向けられたその視線。すべての答えは、まだ静寂の中に眠っている。

参考:The Ancient CodeWikipedia、ほか

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