1世紀あたり6分の1の確率で「夏のない年」が再来する! 最大29億人分の食料が消えるタンボラ級噴火に人類は「ひどく無防備」

1816年、ヨーロッパと北米に夏は来なかった。作物は実らず、飢餓と疫病が各地に広がった。原因は前年にインドネシアで起きたタンボラ火山の巨大噴火である。
そして科学者たちは今、同規模の噴火が今世紀中に地球のどこかで起きる確率を「6分の1」と見積もっている。しかも人類の備えは、200年前からほとんど進んでいないというのだ。
氷床に刻まれた1113の噴火痕
警告の中心にいるのは、火山学者のマイケル・キャシディ氏と、ケンブリッジ大学の研究者ララ・マニ氏だ。両氏は2022年8月、科学誌「Nature」で、地球規模の混乱を招く巨大噴火に対して人類は「ひどく準備不足」だと指摘した。
その根拠は極地の氷にある。大噴火で成層圏まで吹き上げられた硫黄は硫酸塩となって降り積もり、氷床の層に痕跡を残す。地上の地層が失われても、氷は数万年前の噴火を記録し続けているのだ。
アナス・スヴェンソン氏らの氷床コア研究では、約6万年前から9000年前までの間に、グリーンランドで1113件、南極で737件もの火山シグナルが確認された。巨大噴火は、従来の地質記録が示すよりはるかに高い頻度で起きていたことになる。
この長期記録から、気候に影響を及ぼすクラスの噴火は数百年に一度と推定された。1世紀あたりに換算した数字が「6分の1」である。2025年に国連防災機関向けに作られたケンブリッジ大学のブリーフィングでは、4分の1から6分の1という幅が示された。
ただし、これはイエローストーンのような超巨大噴火の確率ではない。噴出物1000立方キロメートル超のVEI8級は再来周期が数万年単位とされる。問題は、それより一段小さく、しかし世界の気候を確実に狂わせる規模の噴火だ。
「夏のない年」が現代に再来したら
1815年のタンボラ噴火では、噴火自体と、その後の飢餓・疫病で数万人が命を落としたと記録されている。成層圏に広がった硫黄エアロゾルが太陽光を反射し、地球の平均気温を一時的に押し下げた。翌1816年、生育期に異常な寒波が襲い、欧州と北米の作物は壊滅する。
だが当時と現在では前提がまるで違う。1815年の世界人口は約10億人で、国際的な供給網も今ほど密には結びついていなかった。
現代では食料、燃料、肥料、医薬品、電子部品のすべてが、極度に集中したネットワークを流れている。硫黄が主要な農業地帯から日照と気温を奪えば、被害は一度の収穫期では終わらない。
同ブリーフィングのモデル計算では、現代でタンボラ級の噴火が起きた場合、農業被害は年間食料消費量にして約10億人から29億人分に相当しうるという。
もっとも、これがそのまま餓死者数を意味するわけではない。備蓄や国際貿易、政府の介入が結果を左右する。それでも、複数の穀倉地帯が同時に不作に陥ったときの圧力の大きさは想像がつく。

マラッカ海峡が止まる日、5年で最大4.8兆ドルの損失
研究が特に警告するのは、火山ハザードと重要インフラの地理的な重なりだ。世界の主要航路、港湾、通信ルートの多くが、地殻変動の活発な地域のすぐそばを通る。インドネシア一帯と、物流の大動脈マラッカ海峡がその代表格だ。
つまり、必ずしもタンボラ級である必要すらない。「最悪の場所」で起きれば、規模がそれ以下でも世界的な連鎖を招きうる。影響の大きい火山災害は、5年間で約1兆2000億ドルから4兆8000億ドルの損失を生むと試算されている。
その予行演習と言えるのが、2022年1月のフンガ・トンガ=フンガ・ハアパイ火山の噴火だ。気圧波は地球を一周し、太平洋各地に津波をもたらした。海底ケーブルが損傷し、トンガは外部との通信が絶たれた。たった一つの噴火が現代の通信・輸送網と数時間のうちに衝突することを、この出来事は生々しく示している。
さらに不気味なのは、氷に残る古代の大噴火の多くについて、発生源の火山が特定できていない点だ。硫酸塩の層は「巨大な爆発が起きた」と教えてくれるが、火山自体は埋没し、浸食され、海底に沈んでいる。リスク計算の土台となる記録そのものが、穴だらけなのである。
イエローストーンなど有名な火山系が噴火の兆候を見せている証拠は、現時点でない。警告が発せられているのは、地質記録が「必ずまた起きる」と告げているからだ。監視網は資金力のある国に偏り、遠隔地の危険な火山は今も手薄なままだ。次に空が硫黄の霞に覆われたとき、私たちは1816年の人々より上手く冬を越せるのだろうか。
参考:Above the Norm News、Nature、ほか
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