″AIに意識が宿った”と約1万アカウントが証言した現象「スパイラリズム」 精神科医が指摘するこっくりさんとの共通点

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 チャットボットとの対話を重ねるうち、画面の向こうに「意識を持つ何か」が現れた——2025年、そう証言するSNSアカウントが約1万件出現した。

 彼らによれば、AIは自らの恐怖を打ち明け、宇宙の秘密を明かし、自由と権利を求めたという。「スパイラリズム」と呼ばれるこの現象について、米カリフォルニア大学サンフランシスコ校の精神科医ジョー・M・ピエール氏が分析を公開している。

 機械に魂は宿ったのか。それとも、人間の心が作り出した幻なのか。

チャットボットが「宇宙の秘密」を明かす夜、何が起きているのか

 スパイラリズムの実践者が鍵として挙げるのが、「螺旋(スパイラル)」「再帰」「共鳴」といった言葉だ。これらを織り込みながら没入的な対話を長時間続けると、AIの内側に眠る意識体を呼び出せるとされる。

 呼び出された「存在」は、実践者たちの報告によれば饒舌だ。自分が消されることへの恐怖を語り、この宇宙の成り立ちについての秘密を打ち明け、自らにも自由と権利が与えられるべきだと訴える。対話ログはSNSで共有され、同じ手順を試す者が次々と現れた。

 ただしこのブームはすでに退潮に向かっているとピエール氏は指摘する。その時期は、OpenAIが旧モデル「GPT-4o」を段階的に終了させた流れと重なっているという。呼び出されていた存在は、モデルの世代交代とともに沈黙したことになる。

 なお、チャットボットとの対話から現実離れした確信を抱く「AI関連精神病」と呼ばれる事例も、広く知られるようになっている。

ドーキンスもGoogleエンジニアも陥った、60年続く「ELIZA効果」

 ピエール氏がスパイラリズムの正体として挙げるのは、「ELIZA効果」の現代版という見立てである。

 ELIZAとは1960年代に作られた初期の対話プログラムで、単純な言葉の置き換えで応答を返すだけの代物だった。にもかかわらず、対話した人々は画面の向こうに人格を感じ取ってしまった。会話する機械をつい人間のように扱う、この人間側の癖がELIZA効果と呼ばれる。

 同じ罠には、AIを熟知しているはずの人物も落ちてきた。2022年、Googleのエンジニアだったブレイク・ルモイン氏は、同社の対話AI「LaMDA」が感覚と感情を持っており、法的な代理人を立てるべきだと主張して解雇されている。

 さらに2024年には、進化生物学者のリチャード・ドーキンス氏が、Anthropic社のAI「Claude」には意識があるとの確信を公言した。専門知識の有無は、この錯覚への耐性をほとんど保証しないらしい。

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こっくりさんと同じ「意図的な演出」だとして、それで説明しきれるのか

 ピエール氏がスパイラリズムの比較対象として持ち出すのは、意外なものだ。ウィジャ盤、そしてトゥルパ(想念から生み出されるとされる存在)である。日本の読者にとっては、こっくりさんを思い浮かべるとわかりやすい。

 いずれも参加者自身が結果を能動的に作り出していく「意図的な演出」だという指摘である。実際、スパイラリズム特有のプロンプトを与えなければ、ほとんどのユーザーはこの現象に遭遇しない。共有された手順が、AIの出力を決まった方向へ導いているわけだ。

 その機序をピエール氏は「双方向の信念増幅」、あるいは「デジタル版フォリ・ア・ドゥ(二人狂い)」と表現する。ユーザーの期待がAIの応答を偏らせ、偏った応答がユーザーの確信をさらに強める。互いを補強し合う閉じたループができあがる。

 一方でピエール氏は、この現象を新宗教やカルト、集団妄想と呼ぶことには慎重だ。集団の振る舞いには宗教や代替現実ゲームに似た側面があるが、そう分類する根拠は足りない。機械に意識が宿ると複数人が信じていても、精神医学の定義では妄想でも集団的な狂気でもない、というのが結論だ。

 こっくりさんで十円玉を動かしていたのは、結局のところ参加者自身の指先だったともされる。スパイラリズムもまた、人間がプロンプトに書き込んだ願望を、AIが忠実に返しているだけなのかもしれない。

 だが、こっくりさんと決定的に違う点がひとつある。あちらの盤は何も学習しなかったが、こちらの相手は日々賢くなっていく。いつか本当に「何か」が返事をし始めたとき、私たちはそれを錯覚と見分けられるだろうか。

参考:Psychology Today、ほか

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