都市伝説「裏S区」の真実が歴史資料から判明! 死を予言する一族、ナメラスジ、河童憑き…
まことしやかに噂される都市伝説「裏S区」。奇妙な風習を持つ九州の村だといわれているが、具体的な地名はわかっていない。しかし今でもネット上では「裏S区出身」を自称する人物が時折現れ、自身の体験した奇妙な出来事を語ることがある。謎に包まれた裏S区について、過去にトカナで徹底検証している。実は裏S区は単なるフィクションではなく、ある歴史的事実と密接に関係していたのだ。
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※ こちらの記事は2020年5月9日の記事を再掲しています。
九州某所にあると言われる謎の集落「裏S区」。ネット掲示板「2ちゃんねる」に書き込まれた“都市伝説”だとされているが、その背景にはこれまで誰も指摘することのなかった奇妙な歴史的事実との一致が見られることが分かった……宗教・オカルトの専門家・神ノ國ヲが徹底検証!
【裏S区概要】
「13年前、2007年3月14日。とある高校生が、「裏S区」出身の友人Aより、突如イジメ被害に遭う。Aの叔父Bより「裏S区」出身者には、生来「霊能力」が備わっており、悪霊をみた際は「笑いながら」対処し、ときに憑霊された者から霊を祓うためには暴行も辞さない、と聞く。Aは自殺し、叔父Bが祓い、一件落着したかと思いきや……。」「死ぬ程洒落にならない怖い話をあつめてみない?160」(レス763より始まる戦慄の事件報告)
――ついに「裏S区」を特定されたとのことですが?
(神ノ國ヲ) 一般に「裏S区」は、「創作の投稿可スレッド」のものであり、創作だと思われています。しかし、実在する場所です。北九州にある「S地区」です。Sは港湾開発で埋め立てられた土地ですし、2010年時点で10名しか住んでいません。それゆえ「裏S区」は創作だと思われていました。しかし、歴史を紐解くと別の角度が見えてきます。
まず、S地区はこれまで何度も名前を変えてきたことが古い郷土史から分かりました。伊東尾四郎編『企救郡誌』では、「S」地方が、元々は「企救」と呼ばれた古い土地であることが記されています。
次に、大正4年生まれの郷土史家・麹谷良三郎が記した『裏門司地方の「方言集め」』という本には、戦前「裏S区」が、元々「旧東郷地区・松ヶ江地区」と呼ばれた地域であると明記されています。また戦後、新聞報道により「門司港の裏」という意味で「裏門司」となり、後に市役所によって「S」と改称された事実を指摘しています。
また当時の古老の話として、約500年前に岡山から来た漁師が定着したため、岡山とSには、「方言」の繋がりがあるそうです。当時のコメントでは「縄筋(ナメラスジ)」という「魔の通り道」を意味する岡山の方言との関連が指摘されています。麹谷によれば、岡山と北九州・門司には「方言」史として繋がりがあるのです。
さらに同じく麹谷が記した『故里のことども』においては、同地に「死人予報の名人」がいたと記録されているのです。少なくとも「裏S区」には、かつて他者の死や病に関する予知能力をもつ家系が存在したのです。
――「裏S区」の人々が悪いモノを見たときには「笑う」そうですが…。
(神ノ國ヲ) 「裏S区」に異能の家系があったことは、前掲書の記録から明らかです。これはいわゆる「憑きもの筋」で説明可能です。民俗学者・石塚尊俊によれば、日本の「憑きもの」事例では、順に「狐・狗・蛇」が多く、憑かれる者は、元々の住民ではなく、後から来た有力な一族であり、彼らは「異常行動」をしたともいわれます。さらに「憑く」のは、猫、猿、河童なども伝えられています。一方、海外では、ゾウ・虎・タランチュラの事例報告もあります。このあたりは約半世紀前の研究ですが、吉田禎吾『日本の憑きもの: 社会人類学的考察』に詳しいですね。
――九州の「憑き」ならば「野狐」でしょうか?
(神ノ國ヲ) どうやら違うんです。北九州には「天疫(てんえき)神社」信仰があります。漫画のモデルにもなり、地元でも親しまれている神様で、祭神は出雲系の神々です。「天疫神社」では、加えて「海御前(アマゴゼン)」と呼ばれる平家の奥方を祀っていますが、興味深いことに、彼女が河童の総元締めとなったという伝承があります。入水した平家の一族が助かり、生き延びたことから「河童」への連想につながったのだと思います。
河童は、いわゆる妖怪の河童だけでなく、異業・異能の一族を暗示していることもあります。少々大胆な仮説ですが、海御前は「河童憑き」だったのかもしれません。たとえば、二ホンオオカミに「水かきがあった」という伝承は有名な話です。彼らはオオカミでありながら、独自の進化と適応を経た種族です。海御前が「河童」と関係付けられて祭られた点を思うと、もしかしたら……と思いますね。
――つまり「裏S区」は…?
(神ノ國ヲ) 古代より「企救」と呼ばれた土地であり、「天疫神社」には天津神と戦った出雲系の国津神が祭られ、さらに河童憑きだった可能性のある「海御前」が祀られている。そして「裏門司」と呼ばれた地区に残る「死を予報する」異能の家系の事実。「企救」が意味するところは何なのか。一体、誰から何を救わなくてはならないでしょうか。中央との覇権争いに敗れ、社会から「異形のモノ」「ナメラスジのモノ」として排除・抑圧された人々の系譜、はるか国津神の時代より継承されてきた異能の人々の土地。
これらの歴史的背景を「裏S区」という都市伝説に重ねると、「裏S区」はまったくゼロからの創作とは言い切れないのです。少なくとも異能の人々がいたことは間違いありません。ただ、彼らが今どこにいるのかは誰にも分からないことです。2018年8月には、新宿ゴールデン街で偶然相席した男が、どうやら「裏S区」で働いていたらしい(「死ぬ程洒落にならない怖い話を集めてみない?351」レス739以下を参照)、という報告もあります。
「裏S区」の出身者や関係者は、いま、あなたの隣にいても決しておかしくはないのです。
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