未解決事件「東電OL殺人事件」にまつわる地蔵の噂とは?!
1997年3月19日、渋谷区円山町のとあるアパートの一室で、骸骨のように痩せ細った女性の絞殺死体が発見された。警察によって身元が判明した被害者の女性は、慶応大学卒業後に東京電力へ初の女性総合職として入社した社員であった。調査が進むにつれて、彼女は昼間に社員として働く一方、夜には一晩に4人というノルマで客を取る売春婦をしていたことが 明らかとなり、この私生活がこの事件の謎を深める一因ともなった。通称「 東電OL殺人事件」と呼ばれる未解決事件である。
事件からおよそ2カ月後、事件現場の隣のビルで仲間4人と生活していたネパール人の男性が 逮捕された。彼は公判まで一貫して殺害を否認しており、被害者と面識がないとも主張していた。実際、彼が犯人であることを示す直接の証拠は無かったのだが、のちに生前の被害者女性から路上で誘われ関係を持っていたことが わかり、これによって無期懲役の有罪となったのである。しかし、2011年になって東京高検によりDNA鑑定が行なわれた結果、発見時に被害者の体から検出された精液のDNAが一致せず、別人のものであることが判明したのだ。これにより彼は無罪が確定したのだが、それは事件から15年も経過していた。
エリートであったはずの彼女が、なぜ夜の仕事まで休みなく働いていたのかは、父親の死や職場でのストレスといったものが原因ではないかとも考 えられているが、彼女を殺害した犯人が果たして誰であるのかについては、時効が撤廃された今もなおわかっていない。
この奇妙な事件について、実はとある逸話が語られている。事件現場と同じ地域、渋谷区円山町の料亭が建ち並ぶその一角に、「道玄坂地蔵」と呼ばれる地蔵がある。この地蔵は、通称「 泰子地蔵」と呼ばれており、その唇には口紅が塗られているのである。
都市伝説ではあるが、東電OL殺人事件の被害者は生前、このお地蔵様の前で客引きをしていたと言われており、この口紅は彼女を供養するために塗られ始めたというのである。 通称にある泰子という名は、被害者の名前なのだ。一説には、事件後には被害者女性に感応する同年代の女性たちの参詣が絶えな かったとも言われている。さらに、話はこれに留まらず、男性からひどい仕打ちを受けた女性がこの地蔵に口紅を塗ることで 、 男性に対して大きな罰が降りるよう呪う地蔵として囁かれるようになったというのだ。
だが、この口紅は本当に事件後供養のために行なわれ始めたものなのだろうか。そもそもこの道玄坂地蔵は、江戸時代に火伏地蔵として設けられたものであり、玉川街道から大山詣での途中にある三十三霊所の一番札所でもある。そして、この地蔵のそばには説明を記す看板が立てられており、そこには「きれいにお化粧してあります」とあるのだ。つまり、 地蔵の口紅は供養ではなく地蔵自体の化粧であり、事件以前からなされていると見て間違いない。もっと言えば、この地蔵へ供養のために訪れ本当に口紅を塗ったのだとすれば、壁に落書きをするのと同様に器物損壊となりかねない。
とはいえ、事件自体は未解決であることに変わりない。一刻も早く事件が解決するようには願いたいものであるが、お地蔵様を不用意に巻き込まないよう注意して欲しい。
【参考記事・文献】
渋谷(道玄坂地蔵)泰子地蔵とも呼ばれています。
道玄坂地蔵と東電OL殺人事件
考察散策「東電OL殺人事件にまつわる地蔵の都市伝説に迫る」
【文 ナオキ・コムロ】
ナオキ・コムロ(ミステリーニュースステーションATLAS編集部)の記事一覧はこちら
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