「紙くずのように潰れて」死亡宣告された19歳 —— 13分間の”死”から蘇った女性が語る光の中の体験

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 死の淵から生還した人々が語る「臨死体験」には、いくつか共通するモチーフがある。眩い光のトンネル、これまでの人生の追体験、深い安らぎに包まれる感覚——。

 米コロラド州に暮らすニコル・カー氏(現62歳)の体験も、そうしたパターンをなぞる。だが彼女の場合、それは一度では終わらなかった。19歳のときに始まった”死”は、実に3度も繰り返され、そのたびに「戻れ」と告げられたと彼女は主張している。

士官候補生の車が横転、「13分間の死」が始まった

 すべては彼女が19歳、空軍士官候補生だった頃に起きた。基地へ向かう車中、同乗の先輩候補生との口論の末に車がコントロールを失い、岩に激突して横転。2人は路上に投げ出された。

 発見されたとき、ニコル氏の身体は「紙くずのように潰れて」いたという。まもなく死亡が宣告され、遺体には毛布がかけられた。医学的には、そこで彼女の命は途切れていた。

 ところが本人によれば、彼女はその一部始終を「身体から離れた場所」から眺めていたという。毛布をかけられる自分を、不思議なほど穏やかに見下ろしていたのだ。

 衝突の激痛はどこにもなく、あるのはただ安らぎだけ。全方位から純白の光が降り注ぎ、それに包まれていく感覚だけがあったと彼女は語っている。

光の中に現れた「祖父」と、溶けていった重荷

 その光の中に、一人の存在が現れた。ニコル氏はそれを天使のように感じたが、やがて亡くなった祖父だと分かったという。

 祖父は彼女に、こう語りかけたとされる——「お前がこれまで生きてきた人生は、本当のお前の人生ではなかった」と。その言葉に触れた瞬間、彼女は自分がなぜ士官候補生になったのかを悟った。それは父親を喜ばせるためだけの選択であり、本来の魂には合わない軍隊の型に、無理やり自分をはめ込もうとしていたのだ——。

 他人の承認のために生き、常に恐怖を抱えて精神を押し殺してきた。その重荷が光の中で溶けていき、そこにあったのは裁きでも後悔でもなく、ただ完全な受容だけだったと彼女は振り返る。

 だが、やがて祖父は「戻る時が来た」と告げた。ニコル氏は絶望し、壊れた身体に戻ることに抗い、この光の中に永遠に留まりたいと訴えた。しかし、そこに選択の余地はなかったという。

3度繰り返された臨死、そして「使命はまだ終わっていない」

 現実の路上では、居合わせた救急救命士が彼女に刺激を与える処置を施していた。すると突然、反応がないはずの右の瞳孔がわずかに動いた。ただちに心肺蘇生が行われ、搬送先の病院でそのまま手術室へ運ばれた。実に13分間、彼女は”死”の側にいたことになる。

 負傷は壮絶だった。粉砕された骨盤、押し潰された手首、頭部と胸部への重度の外傷、神経損傷でほぼ切断状態の片足。医師団はなんとか身体を安定させたが、2週間後には敗血症と壊疽を発症し、緊急手術の最中に心臓が再び止まった。

 ふたたび純白の光へ向かうと、今度は別の存在が「お前の地上での仕事はまだ終わっていない」と告げたという。

 死亡宣告が下る寸前、心臓は再び鼓動を取り戻した。さらにその後、肺に溜まった体液で窒息しかけ、3度目の臨死体験に至る。ここでも同じメッセージが繰り返され、彼女は身体へ「引き戻された」と語っている。

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「私たちは死なない存在」——彼女が語り始めた理由

 以来ニコル氏は、あの経験で感じ取った「人生と死の本当の意味」を伝えることを自らの使命だと考えるようになった。だが、それを語れるようになるまでには長い時間がかかった。「頭がおかしいと思われる」ことを恐れ、長年口を閉ざしてきたのだ。

 転機は、同じ体験をした人々との出会いだった。あの13分間の”死”こそが新しい人生の始まりだったと、彼女は気づいたと振り返る。

 私たち人間は皆、一時的に肉体をまとって経験を積む「死なない存在」なのだ——ニコル氏はそう語り、恐怖ではなく安らぎとして死を見つめてほしいと願っている。

 もっとも臨死体験については、が酸素不足に陥った際の現象ではないかとする脳科学的な見方も根強く議論されている。光やトンネル、多幸感を生理学的に説明しようとする研究者は少なくない。

 ニコル氏が見たものが、肉体を離れた魂の記憶なのか、死にゆく脳が見せた幻影なのか——それを断じる術は今の科学にはない。ただ確かなのは、3度も死の淵から呼び戻された女性が、残りの人生をかけて「死を恐れるな」と語り続けているという事実だ。その言葉の重みだけは、誰にも否定できないのかもしれない。

参考:Daily Mirror、ほか

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