【与那国島海底地形】1万年前の古代人が手を加えていた!? ムー大陸の遺構か自然の産物か… 40年の論争

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Masahiro Kaji, CC 表示-継承 4.0, リンクによる

 透き通った海の底に、直角に切り立った巨大な石の階段が沈んでいる。まるで水没した古代神殿のようなその姿は、失われた文明の痕跡なのか——。

 日本最西端の島、台湾から東へおよそ110キロに浮かぶ与那国島。その沖合の海底で、40年近くにわたって専門家の意見を真っ二つに割り続けている「モニュメント」がある。人工物か、自然の造形か。最新の研究がひとつの答えに近づく一方で、別の科学的手法がまったく違う可能性を示し、論争はいまだ収束していない。

1986年、ダイビングガイドが見つけた「鳥肌が立つ」海底構造

 すべては1986年、一人のダイビングツアーガイドの偶然の発見から始まった。

 新嵩喜八郎氏は、シュモクザメの新たな観察スポットを探して与那国島沖を潜っていた際、説明のつかない海底構造に行き当たったという。ほぼ完璧な90度の角度で削られた岩がテラス状に連なり、海中に沈んだ人工の建造物を思わせる光景だった。

 後年、新嵩氏はそれを目にした瞬間に鳥肌が立ち、これは与那国島の宝になると直感したと振り返っている。

 この「与那国島海底地形」は、東西約250メートル、南北約150メートル、高低差約25メートルにも及ぶ巨大な階段状・神殿状の構造とされる。もしこれが人の手によるものだと確定すれば、琉球列島の歴史そのものが書き換えられることになる。

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「ムー大陸の神殿」か「自然の節理」か——割れる専門家

 この構造を早くから調査した一人が、琉球大学の地質学者・木村政昭氏だった。

 木村氏は、これが数千年前に築かれた一種の階段ピラミッドであり、最後の氷河期以降の海面上昇によって海中に没したのではないかとの説を唱えている。

 人為的影響の証拠は膨大で、純粋な自然現象として片付けるのは非常に難しいというのが同氏の見解だ。一部の論者はさらに踏み込み、これこそ太平洋に沈んだとされる幻の「ムー大陸」の遺構ではないかとも指摘した。

 一方、自然形成説を最も声高に主張してきたのが、ボストン大学で自然科学を教えるロバート・ショック氏だ。ショック氏は、一見の価値ある驚くべき構造であることは認めつつも、あらゆる証拠を検討した結論として、基本的には自然の産物であるとの立場をとっている。ただし、その一部が古代の人間によって「手直し」された可能性までは否定していない。

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自然形成を裏付ける最新研究、それでも消えない「人の手」

 自然形成説は、近年さらに強化されつつある。

 2024年、菅浩伸氏らのチームが日本地理学会の学術大会で発表した研究では、水平の層理面と2組の垂直な節理(岩の割れ目)が組み合わさることで、直角で階段状の地形が自然に形成され得ると指摘された。

 決め手とされたのは、与那国島の陸上にもまったく同じパターンの地形が存在するという事実だ。人工的な加工を示す考古遺物も見つかっていないという。学術界の空気もこの方向に傾いており、東京海洋大学の岩淵聡文教授は、人工の構造物ではないという説がすでに大勢を占めているとの見解を示している。

 だが、話はそれで終わらない。琉球大学の研究チームによれば、海底構造に付着したサンゴ藻などの生物化石の放射性炭素(C14)年代測定と、岩石そのもののベリリウム10(Be10)年代測定の結果、遺跡ポイントは約1万年前かそれ以前、まだ陸上にあった時代に人の手が加えられて形成された可能性が示唆されたという。

 つまり、「自然が作った岩の土台」に「古代人が手を入れた」という、両説の中間に立つシナリオが、科学的手法によって浮かび上がってきたことになる。ショック氏が言及した「手直し」の可能性とも符合する。

 自然が刻んだ節理なのか、氷河期の人々が神殿へと削り上げた祭壇なのか。決着したかに見える論争の裏で、年代測定という新しい物差しは、私たちにもう一度問い直すことを迫っている。次に潜水艇があの石段へ下りていくとき、そこに読み取られるのは地質の偶然か、それとも忘れられた人類史の一ページなのだろうか。

参考:Popular Mechanics、ほか

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