1968年、たった1年で4隻の軍事潜水艦が忽然と消えた —— 半世紀をかけて出そろった”呪われた年”の真相

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 戦争でもないのに、たった1年のあいだに4隻の軍用潜水艦が海の底へと消えた。しかもその4隻は、米・ソ・仏・イスラエルという4カ国の艦だった。

 失われた命は数百人。にもかかわらず、それぞれがなぜ、どこで沈んだのかという謎は、事件当時ほとんど解き明かされなかった。この”呪われた年”の全貌とは……。

地中海が呑み込んだ2隻——ダカールとミネルヴ

 1968年は、地上の記憶だけでも重い。キング牧師とロバート・ケネディが相次いで凶弾に倒れ、ベトナムではテト攻勢が戦火を拡大させ、米ソの冷戦は頂点へと向かっていた。

 その渦中の1月、地中海で2隻の潜水艦がほぼ同時期に姿を消す。イスラエル海軍のダカール(INS Dakar)と、フランス海軍のミネルヴ(Minerve)である。

 ダカールは1月24日午後6時10分(現地時間)、クレタ島の北方から最後の位置報告を送信した。だが、日付が変わった直後を最後に、乗員69名を乗せたまま行方は途絶えた。その謎が解けたのは30年以上も後のこと。米国とイスラエルの共同作戦で残骸が発見され、耐圧深度(クラッシュ・デプス)を超えて潜り込み、水圧に押し潰されたと結論づけられた。

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By Clandestine Immigration and Navy Museom, Israel – Clandestine Immigration and Navy Museom, Israel, CC0, Link

 一方のミネルヴは、1月27日、訓練航海中に消息を絶った。この艦を見つけるには21世紀の技術が必要だった。50年におよぶ空白に終止符が打たれたのは2019年。水中ドローンと高性能ソナーが、フランス・トゥーロン沖およそ28マイル、水深7000フィート(約2100メートル)の海底に眠る船体を捉えたのだ。

 ミネルヴの喪失は姉妹艦ユーリディスの事故とあわせ、フランス海軍に安全手順と捜索救難体制の見直しを迫ったと、米海軍大学(U.S. Naval Institute)の記録は伝えている。

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By Granit29Own work, CC BY-SA 3.0, Link

大西洋に沈んだ原子力潜水艦スコーピオン

悲劇は地中海だけにとどまらなかった。5月21日、大西洋でも米海軍の原子力潜水艦スコーピオン(USS Scorpion)が姿を消す。

スコーピオンは、ポルトガル領アゾレス諸島の南およそ250マイルの海域で、通信のため潜望鏡深度まで浮上したのを最後に交信を絶った。米海軍はその年の10月に残骸を突き止め、翌年の調査で、ダカールと同じく耐圧深度を超えて沈下したとの見方を示している。

この艦は、米国が失った2隻の原子力潜水艦の1隻でもある(もう1隻は1963年に沈んだスレッシャー)。原子炉を積んだ残骸は、今なお大西洋の海底に横たわったままだという。

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By US Navy photo. – https://www.navsource.net/archives/08/08589.htm, Public Domain, Link

CIA極秘作戦「プロジェクト・アゾリアン」とK-129の影

 4隻のなかで最も名を知られているのが、ソ連の弾道ミサイル搭載潜水艦K-129だろう。ただしこの艦が歴史に刻まれたのは、その最期そのものではない。1968年2月末ごろに沈んだこの艦を、CIAがひそかに引き揚げようとした、途方もなく秘密めいた計画のためである。

 その名も「プロジェクト・アゾリアン」。指揮を執ったのは、伝説的な航空技術者にして大富豪、ハワード・ヒューズだったとされる。

 作戦の要となったのが、ヒューズ・グローマー・エクスプローラー号という船だ。ソ連の潜水艦をまるごと引き揚げるために建造されたこの巨大船は、あくまで「深海採掘船」を装い、正体を偽装していたという。

 米海軍の原子力潜水艦ハリバット(USS Halibut)がK-129の残骸を発見してから6年後、グローマー・エクスプローラー号はついに引き揚げに着手する。この作戦はソ連の極秘潜水艦運用に大きな打撃を与えたと伝えられている。消えた潜水艦の悲劇は、そのまま国家間のスパイ合戦の舞台へとすり替わっていった。

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CIA – パブリック・ドメイン, Wikimedia Commonsによる

深海に刻まれた教訓——4つの沈黙が救った命

 1968年に世界を襲った4つの悲劇は、各国の海軍に安全基準と捜索救難体制の改善を突きつけた。ダカール、ミネルヴ、スコーピオン、そしてK-129——それぞれの謎は、30年後、50年後、あるいは冷戦の闇の中で、ばらばらに、しかし確実に解き明かされてきた。半世紀という歳月をかけて、ようやく”呪われた年”の全貌が出そろったのだ。

 海面の下で起きた4つの沈黙が、その後、名も知れぬ多くの命を救ったのだとすれば——深海に消えた彼らは、決して無意味に沈んだわけではなかったのかもしれない。

参考:Popular Mechanics、ほか

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