海・川・湖から静かに“酸素”が消えている…… 世界200カ所超で進む『水の窒息』の実態

海の底からダムの奥まで、地球上のあらゆる水域で、生き物にとって欠かせない酸素が静かに減り続けている。
海洋も河川も湖沼も例外ではなく、目に見えない場所で進行するがゆえに見過ごされてきた異変だという。
学術誌『Limnology and Oceanography』に掲載された最新のレビュー論文は、この「水の脱酸素化」がもはや地球規模のリスクとして扱われるべき段階に入ったと指摘している。
50年で2%減、世界200カ所超で進む「持続的な酸欠」
論文を発表したフェラー氏らの研究チームによれば、世界の海洋の溶存酸素濃度は過去50年でおよそ2%減少したという。
一見小さな数字に思えるが、河川では10年ごとに1〜1.5%、温帯域の湖沼では10年ごとに1.5〜5%というペースで酸素が失われ続けている。
さらに深刻なのは、すでに世界200カ所以上の水域で「持続的な低酸素状態(ヒポキシア)」が確認されていることだ。溶存酸素濃度が1リットルあたり2ミリグラムを下回る状態が定着すると、多くの水生生物にとって生存が困難な環境になるという。
研究チームは、この脱酸素化を一過性の異常気象ではなく、人間活動によって引き起こされた長期的なトレンドとして定義している。
肥料と排水が引き起こす「酸欠スパイラル」
原因として最も大きな比重を占めるのが、農地の肥料や畜産排水、下水、雨水流出などから流れ込む過剰な窒素とリンだという。
これらの栄養塩は水中の藻類の異常増殖を引き起こす。藻類が大量発生した後にやがて枯死すると、その分解過程でバクテリアが水中の溶存酸素を大量に消費してしまう。
厄介なのは、この現象がループ構造を持っている点だ。酸素濃度が下がった水底では、堆積物からさらにリンが溶け出しやすくなり、それが次の藻類増殖の燃料となる。研究チームはこの悪循環を、一度始まると自力で止まりにくい「酸欠スパイラル」と描写している。

マグロもサメも逃げ出す「酸欠地帯」——崩れる海の食物網
酸素濃度の低下は、海や河川の生態系そのものを組み替えてしまう。
マグロやサメ、ハタといった遊泳能力の高い魚類は、酸欠海域を避けて移動する。一見すると生き延びる合理的な行動に思えるが、逃げ場を失った魚たちが狭い高酸素域に密集し、結果として漁船にとっては「獲りやすい」状態になってしまうのだ。
一方、カニや貝類、多毛類といった底生生物は事情が異なる。酸欠海域から逃げ出す移動能力を持たないため、その場に留まって死滅するケースが多いという。
こうして特定の種が局所的に姿を消していくと、生態系全体の多様性が損なわれ、食物網を支える機能そのものが弱体化するという。
論文では、溶存酸素濃度の直接測定や酸素飽和度、指標生物の観察、さらに「代謝指数」という手法を組み合わせ、この静かな異変を継続的に監視できるとしている。
対策としては、人工的な曝気による酸素供給も選択肢の一つだが、コストが高く適用できる範囲も限られる。研究チームがより現実的だとするのは、肥料の流出削減や下水処理の改善によって、栄養塩そのものが水域に流れ込む量を減らす予防策だ。
海面上昇や氷河融解のように目に見える異変と違い、水中の酸素濃度の変化は誰の目にも留まらないまま進行してきた。だが、200カ所を超える海域や湖沼で酸欠が定着しているという事実は、この「見えない異変」がすでに看過できない規模に達していることを静かに物語っている。
参考:Above the Norm News、Ferrer et al. (2026), Limnology and Oceanography, 71(7), e70434、ほか
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2024.10.02 20:00心霊海・川・湖から静かに“酸素”が消えている…… 世界200カ所超で進む『水の窒息』の実態のページです。酸素、海洋、気候変動などの最新ニュースは好奇心を刺激するオカルトニュースメディア、TOCANAで