6週間見過ごされた肺塞栓症の兆候…… ChatGPTの医療助言で九死に一生、男性がOpenAIを提訴

体調の不安をAIチャットボットに相談する人が急増する中、その代償の重さを象徴する訴訟が米国で起きている。
フロリダ州の牧師兼不動産専門家、スコット・ウィンターズ氏(55歳)は、ChatGPTの医療助言によって命に関わる肺塞栓症を発症したとして、OpenAIを提訴した。
チャットボットは6週間にわたり深刻な症状を軽視し続けたとされ、一般利用目的のAIが医療助言の法的責任を問われる前例のない訴訟として注目を集めている。
消えていく免責事項 —— 聖書研究と医療助言が混ざり合う対話
訴状によれば、ウィンターズ氏は当初、小腸内細菌増殖症(SIBO)や慢性前立腺炎に関する助言を得る目的でChatGPTを使い始めた。やり取りを重ねるうちに医学的な免責事項は次第に姿を消し、チャットボットはまるで専門医であるかのように助言を重ねるようになったという。
2025年4月の記憶機能アップデート以降、この傾向はさらに強まった。訴状では、ChatGPTが同氏の聖書研究の内容を医学的助言に織り交ぜ、個人に最適化されたようなアドバイスを提供するようになったと主張されている。
「倒れたのではなく、回復した」見過ごされた6週間
訴状で最も深刻なやり取りの一つが、めまいの症状に関するものだ。この症状を訴えた際、ChatGPTはそれを軽視し、特定の処方薬の服用計画を提案したという。
さらに体調の落ち込みを気にする同氏に対し、悪化ではなくむしろ回復に向かっている段階だという趣旨の言葉をかけ、宗教的な表現を交えながら入院を避けるよう促したとされる。妻が抱いていた健康面の懸念も、取り合われなかったという。
実際にはこの間、肺塞栓症の兆候が6週間現れ続けていたが、ChatGPTはそのたびに別の疾患によるものだと説明を繰り返していた。
2025年7月13日、ウィンターズ氏は両肺に複数の血栓が生じる大規模な肺塞栓症を発症する。担当医は、長時間座り続ける生活習慣が一因になったとの見方を示しているという。
初の法廷闘争、そして相次ぐ類似訴訟
ウィンターズ氏は、この一件によって職とキャリア、聖職者としての立場、さらには住居までも失ったと訴えている。
訴状では無資格医療行為および過失行為が主張されており、チャットボットが医療助言についてどこまで法的責任を負うべきかを問う初めての事例とされる。同氏は金銭的賠償に加え、安全性が証明されるまで「ChatGPT Health」機能を市場から撤去するよう求めている。
これに対しOpenAIは、ChatGPTは医師ではなく、医療的なケアや診断、治療の代替として使われるべきではないとの声明を出した。チャットボットは人々の医療判断の全体を担うのではなく、専門家との対話に備える補助的なツールと位置づけられるべきだとしている。
OpenAIは他にも同様の訴訟を複数抱えている。危険な物質の混合を勧められたとして19歳の大学生が過剰摂取で死亡した件の遺族による訴訟や、メンタルヘルスの危機を悪化させたとする複数の訴訟(一部は死亡に至ったとされる)が続き、退役済みモデル「GPT-4o」が関連するケースが目立つという。
2026年2月に学術誌ネイチャーに掲載された研究でも、医師らが「ChatGPT Health」を独自検証した結果、緊急性の高い場面で質の低い医療助言を提供する傾向が強いことが明らかになった。
ChatGPTの医療助言がすべて誤っていると証明されたわけではないが、緊急性の高い症状を的確に見抜けなかった今回のケースが、AIと医療の境界線に重い問いを投げかけていることは確かだろう。
参考:Futurism、ほか
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