【怪談】窪んだ少女 ― これは、本当にあった話【読者体験談】

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【編集部に届いた、L氏(東京在住)の体験談】

 トイレの花子さんの話を聞いたことはあるだろうか。

 誰もいないはずの学校のトイレで、ある方法で呼びかけると花子さんが返事をしてくれるというものだ。代表的な学校の怪談なので、多くの人が知っていると思う。中には実際に呼び出したことがあるという人もいるかもしれない。

 今回ぼくが経験した話はトイレの花子さんではないが、学校のトイレにまつわる話だ。

 あれが一体なんだったのか? 今となっては分からないのだが、その当時中学生だったぼくと友人は確実に何かを見た――。


■森の中にそびえる、古い木造の中学校

 ぼくが卒業した中学校は創立から100年以上経つ、とても古い学校だった。

 東京から距離的にはさほど遠いわけではなかったけれど、駅から少し離れれば森林と田畑が広がり、池や沼もたくさんあるような田舎だった。

 学校の校舎は新しく建て替えられたものの、創立当初を感じさせる木造の校舎がまだ残っていて、その木造校舎もぼくが学生当時は使われていた。

 建て替えられた新校舎はどこにでもあるようなコンクリート造りだったけれど、木造の方は本当に映画に出てくるようなボロ校舎だった。歩けば木が泣いているような嫌な音がしたし、夏は変な虫が大量に湧いたり、存在だけで不気味な校舎と言えた。

 だから怪談には事欠かなかった。

 木造校舎が残されていた理由は単に予算がなかっただけだと思う。でも校内では「校舎の下がもともと墓地だから」とか、「かつて自殺した生徒がいて、その呪いから取り壊せない」とか、いかにも学園七不思議のような話が蔓延していた。実際、夜遅くなった部活帰りの生徒が幽霊を見ただのなんだのと年に何度か騒ぐこともあったし、学年に1人はいる「自称」霊感が強い生徒が「霊が見える」とみんなの恐怖をあおっていたりもした。

 教員の中には霊感の強い(らしい)オカルト好きの田辺(仮名)という名の先生がいて、木造校舎について「1階の1番奥のトイレは使うな」とよく言っていた。「あのトイレだけはガチでヤバイ」と。


■剥がされたトイレの御札

 どこで手に入れたのか、その先生は除霊のためのお札をトイレに貼ったとも言っていた。そんなことを言われると、好奇心旺盛な生徒たちは狂喜乱舞してそのトイレを率先して使った。どこで買ったのか、本当にお札も貼ってあった。手のひらよりも小さいお札で、それが2枚、入り口と窓の上に貼られていた。

 田辺がガチでヤバイと言うだけあって、そのトイレはいつも日が当たらなくジメジメした不快な場所だった。それに、すごく臭かった。

 ぼくが中学3年になったとき、田辺は教員を辞めた。それと同時にトイレのお札も他の先生たちに剥がされてしまった。その当時の噂でしかないが、田辺のオカルト好きがPTAで評判が悪かったらしい。辞めることになったのは、PTAから何かしらの影響があったのかもしれない。

 田辺がいなくなってから数カ月が経ち、あれは夏休み明けの九月だった。

 ぼくは学校が終わってから友人2人と塾に行くのをさばり、体育倉庫で遊んでいた。

 気が付くと下校時刻になっていた。体育館を使用している部員たちも帰り始めていた。ぼくらも帰ろうとすると、友人Aがトイレに行きたいと言い出した。腹を急に壊してしまったらしい。体育館にはトイレがなかったため、ぼくはなんとなく「木造校舎のあのトイレを使えよ」とAに言った。Aをからかうのと度胸試しのような気持ちもあったけれど、そのトイレが体育館から一番近いトイレでもあった(体育館は木造校舎と渡り廊下でつながっていた)。

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