本当にあった職場の超怖い話「忌み地に就くべからず」― 川奈まり子の実話怪談

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イメージ画像は「Getty Images」より引用

 開業直後から次々に従業員が左足に怪我を負い、すでにその数は10人を超えていた。原因は異なっても、全員、痛めたのは左足だ。

 偶然の度が過ぎるので、「これは何かの祟りだ」と誰かが言いはじめたら、あっという間に噂が広がり、ここ何日かは、次は我が身かと怯える空気がオフィスに蔓延していた。

 当然、業務に支障が出るし、士気も下がる。辞めたいと言いだす者まで現れると、それを嘲笑したり叱りつけたりする者も出て、とげとげしい空気が職場に蔓延していた。

「あっ、田村さん、お疲れさまです。Aが今日は怪我で休みますので……」
「さっき廊下でBさんから聞きました。午前のミーティングで、できるだけ早く神主さんを呼んでお祓いしてもらうことが決まったんだけど、呼べばすぐ来るというものでもないでしょう。除霊が済むまでに、いったい何人が祟りでやられることやら、仕事にならなくなりそうで恐ろしいですよ、まったく!」
「お祓いですか? この会社にはミスマッチな感じがしますけど……。祟りなんて、田村さんは信じるんですか?」
「ここに来る前は信じちゃいなかったけど、僕も階段で変なふうに転びましたからね……急に足もとを払われたようになって……。それだけじゃなく、受付の人から怖い話を聞いたから。そうだ、塔山さんも聞かせてもらうといいですよ」

 ベテラン・エンジニアの田村さんは、河野さんとは正反対のタイプで、40を過ぎた今でも物静かな理系大学生の雰囲気を漂わせていた。この人は合理的な考え方をする人だろうという思い込みがあったので、祟りやお祓いを信じているようなのが、塔山さんには意外だった。

 田村さんがああ言うくらいだからよっぽど凄いことが起きたのに違いないと思い、さっそく休憩時間に受付に出向いて、そこにいた受付嬢と警備員に「何か怖いことがあったらしいね?」と鎌をかけてみた。

 すると警備員が「誰から聞きましたか?」と苦笑いを浮かべた。

「今日、上の方から、その件についてはできるだけ口外するなと言われたんです。噂が広まってることが今朝の会議で問題視されたんだそうです。だから話しづらくなっちゃったんですけど……」
「そこをなんとか!」

中篇につづく

文=川奈まり子

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■川奈まり子
東京都生まれ。作家。女子美術短期大学卒業後、出版社勤務、フリーライターなどを経て31歳~35歳までAV出演。2011年長編官能小説『義母の艶香』(双葉社)で小説家デビュー、2014年ホラー短編&実話怪談集『赤い地獄』(廣済堂)で怪談作家デビュー。以降、精力的に執筆活動を続け、小説、実話怪談の著書多数。近著に『迷家奇譚』(晶文社)、『実話怪談 出没地帯』(河出書房新社)、『実話奇譚 呪情』(竹書房文庫)。日本推理作家協会会員。

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