終電にまつわる本当にあった超怖い話! 電車に乗ると、乗客が一斉に自分を凝視…怪談『終着駅』

 するとだ、何故か乗客が一斉に自分を凝視して来るのだ、サラリーマン、OL、学生、老若男女問わず車内の全員が自分を無表情に見てくるのだ。

 それに対して腹を立てて「なに見てんだ!」と怒鳴ってやろうとは一切思えず、ただ恐怖の感情しか湧かなかった。

 そうなると人というのは、一切の身動きもとれず声も出せなくなるものだと痛感する。

 少しでも恐怖を紛らわそうと、自分を凝視する乗客と目を合わせまいと視線を泳がせていると、車内放送が流れてきた。

「これでアナタも終着駅に行けますね……」

 それは機会音声の様な淡々とした男の声で聞き覚えがあった、その声は駅で会ったあの駅員の声だとそう思った瞬間、段々と意識が遠のいて行った。

 目が閉じていく瞬間、自分を凝視する乗客達が笑って居るのが解った。

 視界が暗くなり、耳に入ってくるガタンゴトンという電車の走行音もフェイドアウトしていった。

 それから、誰かが呼びかける声と体を揺すられる振動で目を覚ました。

 視界に居たのは若い男性駅員だった。

「大丈夫ですか!? 目、覚めました!?」

 慌てた口調で捲し立てる様に声を掛けて来たので、「え? あ、はい……」と自分が返事をすると、「困りますよ! こんな所で寝てもらっちゃ!」と駅員が語気を強めて言う。

 そう言われ自分の状況を確認すると、なんと線路の軌条部分にうなじを乗せ、体は退避スペースに入っているという状態であった。

 眉間にシワを寄せた顔で駅員が「始業前の見回りの際は居られなかったのに、いつ線路に侵入したんですか!? 我々が見つけてなかったら、アナタ轢かれてたかもしれませんよ!」と、怒気をはらんだ口調で言ってくる。

 それを聞き、もし気が付かれる事が無く、この状態で電車が来ていたら……と思うと生きた心地がせずゾッとした。

 ホームへと引き上げられた後、線路内に侵入したという事で警察を呼ばれてしまい、駅事務所にて取り調べを受ける事となった。警官に事情を説明するも全く信じて貰えず、逆に酔っ払ってたんだろうとか、つまらない言い訳をするなと怒られる始末だった。

 前科も無く初犯という事で、逮捕こそされなかったが厳重注意処分となり、その事がすぐ会社に知れ、きつく問責を受ける事になった。

 その後、解雇はされなかったものの、上司や同僚の視線や態度から会社に居づらくなってしまい、結局は退職願を出し田舎へと帰る事にした。

 今は家業の畑仕事をしながらのんびりと生活をし、あの時の事はサラリーマン生活に追われ疲れていた、自分の妄想や幻覚だったのだと思うようにしていると語ってくれた。


文= がもん鉄(田中俊行)

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