『慰安婦像大図鑑』著者を村田らむがインタビュー! おすすめ慰安婦像5選、安倍元首相が土下座、日韓合意踏みつけ…韓国全土155像を収録
皆さんは韓国に何体の慰安婦像があるか、ご存じだろうか?
「日本大使館の前にある、椅子に座る少女の像だけじゃないの?」
と思う人も多いだろう。少し詳しい人なら、いくつか他にも建てられているのを知っているかもしれない。
実は韓国国内だけで150以上の慰安婦像が建てられている。驚きの数だ。
そして今年、その像がほぼ全て収録されている本『慰安婦像大図鑑』(日野健志郎/パブリブ)が発売された。
著者はライターの日野健志郎さんだ。
実は全ての慰安婦像を回っている人は韓国人でもほとんどいないらしい。なぜ、日野さんは韓国全土の慰安婦像を見たのか、そしてこの本を作ったのか、聞いてみた。
「もともと韓国のディープスポットが好きなんですけど、今は転換期で怪しい場所が年々消えていっています。そういう場所を写真集として残せたらいいなと常々思っていて。編集者と相談して慰安婦像の写真集を作ったら面白いんじゃないか? という話になりました」(日野さん)
試しにソウルにある15像を回ってみた。
ちなみに慰安婦像のマップは、日本のNHKに相当するKBSという放送局が作っていた。グーグルマップにピンが置かれているので、それを使えばたどり着けるはずだったが、ただ地図は微妙にズレていて大変だった。
100か所以上掲載された時点で更新は停止。以降の像は現地の報道などを参考に自力で探したという。
ソウル市内は交通機関が発達しているので2、3日で回ることができた。
回る前は、日本大使館前にある慰安婦と同じ物が並んでいるだけかと思ったがそうではなかった。
「ソウルだけでも、韓国人と中国人の少女が並んで座っているバージョン、実在の女子高生をモデルに作られた立位バージョン、背中に蝶の羽根が生えたバージョンなど思ったよりもさまざまなバリエーションがありました。
もちろんステレオタイプの慰安婦像が多いんですけど、その場合も服が着せられていたり、まわりにメッセージが書かれていたりと個性的でした。羽の生えた像なんて真冬で服の着すぎで異星人みたいになってて、たまげましたね。これは面白いぞ、ということになり本格的に取材をはじめました」(同)
取材を開始したのが2018年で2年で100像くらい周ったという。終わりが見えてきたところで、コロナパンデミックで渡航できなくなってしまった。その時点では慰安婦像の総数は120像くらいだったのでもう本を出してしまおうとも思った。
「そんな折、お宝の像が建てられたというネットニュースが伝わってきました。安倍総理激似の像が慰安婦に土下座をしている像が建てられたとのことでした。」(同)
像を作ったのは私設の植物園の園長で、安倍総理をモデルにしたわけではないと言ったが、それにしてはよく似ていた。
「この像を撮らずに本を出したら絶対に後悔すると思って、まんじりともしないで渡航が解禁になるのを待ちました。」(同)
コロナの規制が解除されるとすぐに韓国に渡った。あと20像でコンプリートするところだったのだが、コロナの間に30像以上増えてしまっていた。残り50像。今までは電車やバスなどを乗り継いで回っていたが、レンタカーを借りて一気に回ることにした。
「韓国は車線が反対ですし、運転も荒い。めちゃくちゃ煽られます。高速道路ではガンガン飛ばす車も多いです。すごい大変でしたけど、取材のスピードは段違いで一回の韓国旅行で一気に残りの像をコンプリートすることができました。」(同)
こうして、全ての像を撮り終わった日野さんだが、振り返ると苦労もひとしおだったとう。
「天候はなかなか大変でした。土砂降りの日もあって、ビショビショになってしまい石像の色が変わってしまったり、写真を撮るのに一苦労でした。詳しくは言いづらいですが、建物内に入るのに苦労した場所もありました。行ってみたけど取り壊されていたというのは一件だけでしたね。慰安婦像が新たに建つペースはここのところ落ちてきていますが、建てられたものは壊されてはいなかったです。」(同)
155像巡る旅、途中で飽きたりすることはなかったのだろうか?
「現場の行き方は検索したんですが、どんな像が建っているかは見ないで探しに行きました。ガチャを引くような感覚でした。大使館型はノーマルカード、珍しい像はレアカード、みたいな感じですね。
像自体は普通でも着せられた服が面白いものもあります。クリスマスの時期だとサンタの格好をさせられていたり……。それってどうなの? とは思いましたけど。
安重根義士記念館の前に作られた像は、普通に服を着せられて帽子とマスクをはめられていたので、普通におばさんたちが立っているのと見間違えて、スルーしてしまいました。
みんなでメッセージを書いて貼っていくコーナーがあったのですが、
『日本人死ね死ね死ね』
ってハングルで書いてるのを見つけて、すごい執念を感じて震えました。
メッセージと言えば、日韓関係が悪化して反日キャンペーン真っ最中の時期に、中学生が書いた詩が慰安婦像の脇の壁に貼られてたんですが、まさに日本への宣戦布告みたいでしたよ。そういう発見があるので飽きることはありませんでした。」(同)
「宣戦布告」とは穏やかでないが、本の中には詩が抜粋してあった。
「私たちを挑発した彼らへ宣布する。魂の戦争だと。1919年、叶わなかった独立戦争。2019年、不買運動で見せてやる。私たちに入り込む全てのものを退ける。行かず、買わず、書かず、見ず、語らず。今度の戦争は大韓民国の勝利で終わるはずだ。」(同)
ちょっと中二病っぽい感じではあるけど、やる気満々である。こわいこわい。
最後に日野さんに、オススメの慰安婦像を紹介してもらった。
●巨大おばあさん
広州市には、現存する元慰安婦の女性とボランティアスタッフが生活する私設『ナヌムの家』がある。そこには実に16体以上の慰安婦の胸像が建てられている。慰安婦像は少女の像というイメージがあるが老婆のものも多い。ここの胸像も、晩年の姿が彫られている。施設の外には巨大なおばあさんの像がある。しかも半裸だ。ものすごい迫力とリアリティーだ!!
●鏡
富川市にある安重根公園に建てられた像。安重根は日本の初代総理大臣伊藤博文を殺害した韓国の英雄だが、各地に像が建てられている。安重根像や徴用工像とセットで慰安婦像が建てられている。安重根公園は、安重根の偉業を称える公園だが、その中に建てられた慰安婦像は一風変わっている。後ろから見ると、普通に建っている少女なのだが、前に回ると体の前面がスパンと切れていて、鏡状になっている。鏡に自分を映して慰安婦の気持ちになろう……という意図らしい。
●日韓合意踏みつけ
釜山駅の広場に建てられた慰安婦像は、日野さん一番のオススメの慰安婦像だ。2015年12月28日の日韓外相会談で日韓間の慰安婦問題の最終的かつ不可逆的な解決を確認した日本政府と韓国政府の合意がなされた。この合意に対して納得できなかった人は多かったようだ。この慰安婦像はその怒りの気持を現している。慰安婦像は、日韓合意の文書が書かれた石板を踏みつけてバラバラに砕いている。ものすごい力強い像だ。表情は穏やかなまま、踏みつけているので、なんか逆に怖い。
●ミニチュア&VR
我が家に慰安婦像を……と思う人も多いらしい。『小さな慰安婦像プロジェクト』のクラファンで生まれた、ミニチュアの慰安婦像は通販で売られて、バク売れしているとか。
また、最先端テクノロジーであるVRで作られた慰安婦像も登場している。イ・ジェヒョク氏が作ったVR慰安婦像は宇宙空間を椅子とともに浮遊している。
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