上空1万4000メートルから雷雲にダイブ! 目や口から血を吹き出しながら「40分間」も落ち続けた男の壮絶サバイバル

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 スカイダイビングといえば、数分間のスリルと絶景を楽しむ極限のスポーツだ。2012年にフェリックス・バウムガルトナー氏が成層圏(高度約3万9000メートル)からダイブし、音速の壁を越えた記録は世界中を熱狂させた。しかし、彼が地上に到達するまでにかかった時間は「約9分」である。

 では、高度1万4000メートルから生身で空に放り出され、地上に着くまでに「40分」もかかった男がいると言ったら、あなたは信じるだろうか?

 しかも彼が落ちていったのは、青空ではなく、氷と稲妻が吹き荒れる「積乱雲(雷雲)」のど真ん中だったのだ。

 今回は、航空史に残る最も過酷で絶望的なフリーフォールを生き抜いた男、ウィリアム・ランキン中佐の信じがたい実話を紹介する。

究極の選択:凍死か、窒息死か、それとも…

 事の発端は1959年7月26日。第二次世界大戦と朝鮮戦争を生き抜いたベテランパイロット、ランキン中佐は、F-8クルセイダー戦闘機で飛行中、巨大な雷雲に遭遇した。

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ミッドウェイで発艦準備をする2機のF-8(1963年) 画像は「Wikipedia」より

 彼は雲を避けるために高度1万4300メートルまで上昇したが、不運にもそこでエンジンが完全に停止してしまう。
 
 外の気温はマイナス50度。酸素もほとんどない死の空間だ。しかし、彼には脱出以外の選択肢は残されていなかった。

「これはかなり高い高度からの脱出になるぞ」と自らにつぶやき、彼は緊急脱出レバーを引いた。その瞬間、強烈な風圧で手袋の片方を吹き飛ばされながら、彼は戦闘機から漆黒の空へと放り出された。

気圧の急変化で全身が爆発寸前に

 与圧されたコックピットから極薄の大気へ突然放り出されたことで、彼の体は即座に悲鳴を上げた。

「腹が2倍に膨れ上がったような感覚だった。鼻が爆発したかのように感じ、目や口からも血が吹き出した。ドライアイスを皮膚に押し当てられたように足首や手首が焼け焦げ、手袋を失った左手は完全に感覚を失った」と、彼は後に米誌『Time』に語っている。テレビ番組の罰ゲームなど比にならない、まさに地獄の責め苦である。

 彼はここでパラシュートを開くわけにはいかなかった。この高度で開いてしまえば、ゆっくり降下している間に凍死するか窒息死してしまうからだ。彼は、気圧計が高度3000メートルを感知した時点で自動的にパラシュートが開くシステムに全てを託し、ただ落ち続けることを選んだ。

終わらない「雷雲のジェットコースター」

 稲妻が周囲で弾け、乱気流に揉まれながら落ちていくランキン中佐。永遠とも思える時間の後、ついにパラシュートが開いた。

 しかし、絶望的な事実が判明する。彼はまだ高度3000メートルをはるかに超える「雷雲のど真ん中」にいたのだ(気圧の乱れでセンサーが誤作動したと思われる)。

 ここからが本当の地獄だった。

 巨大なパラシュートが開いたことで、彼は雷雲内の強烈な上昇気流(アップドラフト)の格好の標的となってしまったのだ。

 彼は雲の中で、最大で1800メートルも上に吹き飛ばされては落ち、また上に吹き飛ばされるという「死のジェットコースター」を延々と繰り返すハメになった。氷の粒が全身を叩きつけ、緊急用の酸素も底を尽きかけていた。

そして奇跡の生還へ

 やがて彼は、窒息や落雷を奇跡的に免れながら、ようやく雷雲の下へと抜け出した。

「あとは着地さえ上手くいけば助かる」と思った彼だが、不運は最後まで付きまとう。彼の体は森の木に激突し、枝を折って地面に叩きつけられたのだ。

 腕時計を見ると、戦闘機から脱出してからなんと「40分」が経過していた。

 彼は自力で道路まで這い出し、通りかかった車に助けを求めた。病院での検査の結果、彼は軽い凍傷と減圧症を患っていたものの、命に別状はないという驚異的なタフさを見せつけた。

 雷雲の中で40分間もシェイクされ続けた結果としては、これ以上ない「ハッピーエンド」だろう。

 ランキン中佐はこの過酷な体験を生き延び、その後も天寿を全うして2009年に88歳でこの世を去った(温かいベッドの上で)。

 次にあなたが飛行機に乗って揺れを感じたときは、窓の外の雲の中で40分間ももがき続けた不屈の男のことを思い出せば、少しは気が楽になるかもしれない。

参考:IFLScience、ほか

TOCANA編集部

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