高さ100m超の津波を生んだ「小惑星衝突」の痕跡か! 北海海底の謎の円形構造、20年越しの論争にようやく決着

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 イギリスとヨーロッパ大陸に挟まれた北海。その海底深くに、地質学者たちを20年以上も悩ませてきた奇妙な「円形の傷跡」が刻まれている。

 火山活動が生んだものなのか、それとも地下の塩がせり上がってできたのか——正体をめぐって研究者は真っ二つに割れてきた。そんな長年の謎に、このほど決着がついたという。

海 底に眠るこの構造の正体は、はるか4600万年前に地球を襲った「小惑星衝突」の痕跡だというのだ。

20年以上研究者を割ってきた「シルバーピット・クレーター」

 問題の地形は「シルバーピット・クレーター」と呼ばれている。

 イングランド北部ヨークシャー沖から約130キロ、南部北海の海底からさらに約700メートル下に埋もれた、直径およそ3キロの円形構造だ。中心部の周囲を、幅約約19キロにわたっていくつもの同心円状のリングが取り囲むという、実に不可解な姿をしている。

 この構造が最初に確認されたのは2002年のこと。以来、地質学者たちの見解は真っ向から対立してきた。

 一方には「これは超高速の天体衝突が残した紛れもない特徴だ」とする陣営がいた。もう一方には「地下の塩の移動など、より一般的な地質現象で説明できるはずだ」と主張する陣営がいた。決め手を欠いたまま、論争はおよそ四半世紀にわたって平行線をたどってきたのである。

決め手は「衝撃を受けた石英」——干し草の山から針を探す作業

 この膠着状態に終止符を打ったのが、エディンバラのヘリオット・ワット大学を中心とする研究チームだ。研究成果は科学誌『ネイチャー・コミュニケーションズ』に発表された。

 チームは高解像度の地震波イメージング、岩石サンプルの顕微鏡分析、そしてコンピューターシミュレーションを組み合わせ、多角的に構造の正体に迫った。

 地震学者である主著者のウィズディーン・ニコルソン博士は、新たな地震波イメージングによってクレーターをかつてない精度で観察できるようになったと語っている。

 そして決定打となったのが、ある鉱物の発見だった。石油探査の掘削孔から採取された試料の中に、クレーター底と同じ深さで「衝撃を受けた」石英と長石の微結晶が見つかったのだ。

 これらの結晶は、極端な衝撃圧力によってしか生じない特殊な内部構造を持ち、天体衝突を裏付ける最も強力な証拠のひとつとされる。

 ニコルソン博士はこの発見を「干し草の山から針を探すような作業だった」と振り返り、衝突クレーター説を疑いの余地なく証明するものだと述べている。

出典: Nicholson, U. et al. “Multiple lines of evidence for a hypervelocity impact origin for the Silverpit Crater.” Nature Communications 16, 8312 (2025). CC BY 4.0.

直径160メートルの小惑星が生んだ天変地異

 チームが復元した4600万年前の光景は、まさに天変地異と呼ぶにふさわしいものだ。

 研究によれば、直径およそ160メートルの小惑星が西の方角から浅い角度で飛来し、当時の北海に激突したとみられる。この衝突が主要なクレーターを形成すると同時に、膨大な量の岩石と海水を最大1.5キロもの高さまで噴き上げたという。

 さらに、跳ね返った海水が生んだ津波は、高さ100メートルを超えたと推定されている。現代の高層ビルをはるかに凌ぐ巨大な水の壁が、太古の海を襲ったことになる。

 もっとも、この規模でも「桁違いの災厄」には遠く及ばない。恐竜を絶滅に追いやったとされるメキシコのチクシュルーブ・クレーターを生んだ小惑星と比べれば、シルバーピットの衝突ははるかに小さい。それでも、地球が幾度も天体の直撃を受けてきた惑星であることを、この海底の傷跡は物語っている。

 長い年月を生き延びた古代の衝突痕は、世界でも比較的まれな存在だ。その一つが北海の海底で正体を明かした今、私たちの足元にはまだいくつもの太古の記憶が眠っているのかもしれない。次にその封印を解くのは、いったいどの海の底になるのだろうか。

参考:The Debrief、ほか

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