内臓が「吸引」された遺体、ブラジルUFO研究界を38年間ふたつに割り続ける1988年の人体ミューティレーション事案

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 1988年9月29日、サンパウロ市南部を潤すビリングス貯水池のほとりで、53歳の男性の遺体が発見された。着衣は下着一枚。顔と体のいくつかの箇所で軟部組織が失われ、体内から臓器の一部が消えていた。

 事案を単なる変死から、UFO研究史に残る大論争へと押し上げたのは、検死報告書に書き込まれたたった一語だった。「吸引」——。

 発見から38年が経った今も、ブラジルのUFO研究界はこの遺体をめぐって真っ二つに割れている。

検死報告書645/88号に残された「生活反応」という記載

 遺体はグラジャウ地区の水辺で警察に収容された。身元は年金生活者ジョアキン・セバスチャン・ゴンサウベス氏と確認されている。現場を撮影した鑑識官ルーベンス・シルベストレ・マルケス氏の写真が後に医療関係者の間を渡り歩き、事案は法医学の枠を越えて広がっていく。

 検死報告書645/88号に署名したのは、ジョルジェ・ペレイラ・デ・オリヴェイラ氏とクラウジオ・ロベルト・ザベウ氏。死因は急性出血と多発性外傷、そして迷走神経抑制とされた。

 異様だったのは、その先の記述である。報告書は損傷部に「生活反応」があったと記録した。法医学でいう生活反応とは、その傷が生きている間に生じたことを示す所見だ。さらに損傷の生じ方について、軟部組織と自然開口部からの吸引による切開という趣旨の表現が使われていた。

 野生動物の食害でも、通常の犯罪でも、この書き方はまず出てこない。

キャトルミューティレーションと同じ手口ではないか、と1993年に唱えた研究者

 事案が国際的に知られるようになったのは5年後だ。スペイン出身のUFO研究者エンカルナシオン・サパタ・ガルシア氏が、1993年9月発行のブラジルの専門誌「UFO」25号で地球外起源説を唱えた。

 根拠は主に4点。臓器がごく小さな開口部から抜き取られ、既知の技術では説明しにくいこと。唇や下顎、腋窩、会陰部に直径4センチ前後の揃った損傷があり外科的処置を思わせること。ハゲワシが旋回するだけで降りなかったという情報。そして獣の爪や牙が残す粗い裂傷がないことだ。

 北米で長年報告されてきたキャトルミューティレーションの特徴とよく似ている——同氏はそう指摘した。以後この事案は「人体版ミューティレーション」の代表例として世界中で引用され続ける。

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2002年の再調査が突き止めた「約20羽のハゲワシ」

 だが14年後、同じ雑誌が正反対の結論を載せる。ブラジルのUFO研究団体INFA会長クラウデイル・コーヴォ氏らのチームによる再調査が、2002年7月の同誌80号に掲載されたのだ。

 チームがまず洗い直したのは被害者本人の背景だった。ゴンサウベス氏にはてんかんとシャーガス病の持病があり、抗てんかん薬を服用し、飲酒の習慣もあった。しかも下着一枚で泳ぐのが常だった。水辺で急な発作を起こした可能性が視野に入る。

 続いて集められたのが現場周辺の証言だ。消防隊のミルトン・デ・ソウザ・ゲデス軍曹は、約20羽のハゲワシが遺体の軟部組織をついばんでいるのを見たと証言。鑑識官エドゥアルド・ロベルト・アルカンタラ・デウ=カンポ氏も、周辺住民からハゲワシやげっ歯類が日常的に出没するという話を集めていた。

 デウ=カンポ氏は実地検証も行った。同じ場所に犬の死骸を置くと、ネズミとハゲワシに2日ほどで徹底的に食い荒らされたという。さらに法医学者フォルトゥナート・バダン・パリャーレス氏が現場写真を鑑定し、体表の損傷はいずれも小型げっ歯類によるものと矛盾しないとの見解を示した。

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 コーヴォ氏自身は、UFO学は単一の事実ではなく複数の事実の積み重ねに立脚すべきだという立場だ。円盤の乗員が人間を切断しているなら世界中で数千件起きているはずだが、実際はそうなっていない、と論じている。

 説明されないまま残った点もある。動物が下着を破らずに内部の損傷を作れたのかという「下着の謎」。顔面の黒い斑点(デウ=カンポ氏は電気的な熱傷の可能性に触れたが裏づけはない)。そして報告書のあの独特な文言そのものだ。再調査の側にも、ブラジルに生息しない北米産の動物を比較に持ち出すなどの甘さが指摘されている。

 一方でUFO説の側も決定打を欠く。飛行物体の目撃報告も、アブダクション証言も、異常な物質も出ていない。1995年に両眼を欠いた状態で見つかったオリビオ・コレイア氏の事案も、当初は外科的除去とされながら、後に自然の捕食者の仕業と整理された。

 証拠の重心は、明らかに自然界の側へ傾いている。それでも38年間論争が終わらないのは、あの報告書を書いた者たちがなぜ「吸引」という言葉を選んだのかを、いまだ誰も説明できていないからだ。

参考:Vigilia、ほか

TOCANA編集部

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