「このビルは、ヤバイ…」 本当にあった職場の怖い話! ~実話怪談・忌み地に就くべからず ~

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イメージ画像は「Getty Images」より引用

 2階の職場に戻り、井原さんに今見た光景を報告すると、井原さんは思っていたより驚かなかった。

「今まで言わなかったけど、僕は少し霊感があるんだ。このビルはヤバいよ。最初からわかっていた」

 同僚の意外な側面だった。塔山さんには、いわゆる霊感はない。ここへ来るまではオカルト的なことには興味を持ったこともなかった。

「厭な気が漂っているからね。特に1階が凄い。あとはトイレ」
「トイレ?」
「うん。このフロアの男子用トイレにゴミ箱があるでしょ? あの蓋がひとりでに開いたり閉まったりしているから、入ったときに見てみるといいよ」

 塔山さんはトイレにゴミ箱があったことすらうろ覚えだった。「わかった」と返事して、ふとしたことを思いつき、井原さんに訊ねた。

「もしかして、霊が取り憑いてるかどうか、わかる? 僕は大丈夫? 怪我をした田村さんやAくんは、ヤバい感じがした?」
「プロの霊能力者じゃないからね! そんなのわかんないよ。塔山さんは普通だと思うし、田村さんとAくんについても全然何も気がつかなかったなぁ……。だけど、河野さんは、なんとなく暗いというか黒っぽい感じがする。うまく説明できないな。単に僕があの人のことがちょっと苦手なだけかもしれない」

「僕も河野さんはちょっと」と塔山さんは井原さんに言った。「気が合うね」
「ね」と井原さんは笑顔で返す。

「だけど、女性にモテるのはああいうタイプなんだよ。河野さんてバツイチなんだけど、こんど10歳以上年下の女性と再婚するんだって。再婚同士で、女性の方はお子さんがいるらしいけど、田村さんによれば、モデルみたいな美人だって!」
「へえ。そうなんだぁ。田村さんはその女性に会ったの?」
「うん、昨日。駐車場で河野さんたちと偶然一緒になって立ち話したんだって。まだ内緒にしておいてくれと河野さんに注意されたから。言いふらすなと言われたから、塔山さんはBさんやエンジニアさんたちに言っちゃダメだよ」

 それから一週間ほどして、河野さんの結婚が公表された。

 その前に神主を招いてお祓いをしてもらった。1階ロビーに祭壇をしつらえ、営業時間前の朝早くに従業員全員、100名余りが集まった。穢れを取り除く清祓いの儀式をそこで行った後、オフィスと作業室を神主が巡回して祈祷するという念の入れようだった。

 儀式の前に社長から、今後は毎年これを行い、さらに何か変事があれば別途、御祈祷してもらうという説明があったが、ひとりとして揶揄の表情を浮かべなかった。

 あれからさらに何人か左足を負傷していた。Aくんのギプスはまだ取れず、カマイタチに切られたという女性スタッフは辞めてしまった。あの受付嬢も近頃、見ない。

 そんな中で、河野さんの結婚は明るいニュースとして、大いに歓迎された。再婚同士だから挙式せず披露宴も開かないというので、塔山さんたちは職場で河野さんにサプライズを仕掛けて祝福した。

 その後は年末まで平穏な日々が続いた。

(つづきはこちら)15日公開予定

文=川奈まり子

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■川奈まり子
東京都生まれ。作家。女子美術短期大学卒業後、出版社勤務、フリーライターなどを経て31歳~35歳までAV出演。2011年長編官能小説『義母の艶香』(双葉社)で小説家デビュー、2014年ホラー短編&実話怪談集『赤い地獄』(廣済堂)で怪談作家デビュー。以降、精力的に執筆活動を続け、小説、実話怪談の著書多数。近著に『迷家奇譚』(晶文社)、『実話怪談 出没地帯』(河出書房新社)、『実話奇譚 呪情』(竹書房文庫)。日本推理作家協会会員。

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コメント

2:匿名 2019年4月16日 22:42 | 返信

あ ほ く さ
やめたら?このブログ?(煽り

1:匿名 2019年4月15日 11:03 | 返信

小池真理子の『墓地を見下ろす家』に内容が酷似している。

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