「人体自然発火現象」で英男性が死亡! 公共の場で突然燃え上がり… 報告例200件もいまだ原因不明

 街を歩いていた人物が突然、全身を炎に包まれ苦しみもがきはじめたなら――。不可解な「人体自然発火現象」はこの現代においても起こっている。

2017年ロンドンの「人体自然発火現象」

 人が寿命を迎える時、まるで短くなったロウソクの最後の灯火が消えるようにして命は尽きるのかもしれない。しかし宇宙に目を向けるなら、太陽の10倍以上の質量を持つ恒星はその寿命が尽きる時、超新星爆発を起こし宇宙を揺るがすド派手なクライマックスを遂げる。

 ごくまれにではあるが、人間もこのようなスペクタクルな最期を遂げるケースがある。それが「人体自然発火(Spontaneous Human Combustion)」である。

 詳細な記録が残されている人体自然発火のケースは1951年のアメリカにさかのぼるといわれているが、最近では2017年にロンドンで報告された。

 2017年9月17日午後1時頃、ジョン・ノーラン氏(70歳)がロンドン北部のオーチャード・プレイスの路上を散歩していた時、信じられない出来事が多くの通行人の目の前で起こった。

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ジョン・ノーラン氏 「Anomalien.com」の記事より

 散歩中のノーラン氏は自分自身が炎に包まれていることに気づいたと同時に、周囲にいた人々をパニックに陥れたのだ。

 必死に火の粉を払おうとするノーラン氏に対し、幾人かの通行人は上着を脱いでノーラン氏の身体を覆ったが、その甲斐も虚しく炎はさらに激しさを増しノーラン氏に襲いかかった。

 駆けつけた消防隊によってし、なんとか火は消し止めたられたが、ノーラン氏はすでに身体の65%を覆う広範囲の火傷を負っており、残念ながら翌日に病院で亡くなってしまった。

 その後、当然ながら警察はノーラン氏を襲った炎の原因を特定すべく調査を行ったが、驚いたことに付近にあるほかの物体や構造物は炎の影響を受けていなかったのだ。

 歩道も近くのフェンスも焦げたり燃えたりした形跡はなく、さらにノーラン氏の遺体からは可燃性物質や燃焼を促進するような化学物質の痕跡は見つからず、原因が外部にある可能性は排除されたのだ。

 警察の報告書によると、ジョン・ノーラン氏は周囲から尊敬の念を抱かれている穏やかで愛想の良い人物であり、人との諍いなども皆無であった。

 目撃者の証言では事件の前に誰かと言い争ったり口論をしたということもなく、他者による意図的な犯行である可能性は排除された。

 検死の結果、ノーラン氏の死因は重度の火傷によるものであることが明らかになったが、不思議なことに火種が外部からのものなのか内部からのものなのかは特定できなかったのだ。

 こうした複雑な状況を踏まえ、研究者らは推測に目を向け、人体自然発火現象がノーラン氏の悲劇的な死の最も妥当な説明となる可能性を示唆したのだ。

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画像は「Pixabay」より

公の場所で起こった初めての人体自然発火事件

 公式に記録されている人体自然発火事件はわずか200件程度だが、実際にははるかに多く発生していると考えられている。その中にはまったく説明のつかないケースも少なくない。

 一般的に科学者は人体自然発火現象を認めていないのだが、わずかに報告された症例は主にアルコールを過剰に摂取する個人によるものであるとしている。

 この理論では、体内の高レベルのアルコールと可燃性の衣服が組み合わさると、火のついたタバコなどの小さな火花によってさえ火災が発生する可能性があると仮定している。

 一部の専門家は、人体内部で起こる異常な化学反応の可能性など別の説明を提案しているが、これらの理論を実証するにはさらなる研究が必要である。

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画像は「Pixabay」より

 ジョン・ノーラン氏の事件は人体自然発火という謎の現象についての興味を再び引き起こし、この稀で不可解な現象についてのさらなる探求と研究を促すこととなった。

 記録に残されているこれまでの人体自然発火現象は、事故後の現場から推測されたケースがほとんどなのだが、このノーラン氏の事件は公の場所で起こったことであり、目撃者が多数いることがほかとは大きく異なる点だ。

 その意味ではこのノーラン氏の事件は人体自然発火現象が“密室”から日の当たる場所に引き出されたケースといえるだろう。2017年を最後に今のところは報告されていないようだが、今も多くの謎に包まれている人体自然発火現象の解明の糸口が見つかることを期待したい。

参考:「Anomalien.com」ほか

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文=仲田しんじ

場末の酒場の片隅を好む都会の孤独な思索者でフリーライター。
興味本位で考察と執筆の範囲を拡大中。
ツイッター @nakata66shinji

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