儀式、秘密言語、空中メッセージ……オカルト界の女帝「ブラヴァツキー夫人」とは?

画像は、Wikipediaより引用

 ヘレナ・ペトロヴナ・ブラヴァツキー、 通称ブラヴァツキー夫人は、 ロシアに生まれた19世紀最大の神秘主義者と言われる人物である 。近代神智学の創唱者とされ、その体系化された壮大な思想は、現代に続くオカルト思想の源泉となったと言われている。

 1831年に、ロシア南部のエカテェリノスラフという町に生まれた彼女は、幼い頃から精霊と会話をするなど夢見がちな少女であったという。

 この頃から、神秘世界に強い関心を持っていた彼女は17歳で結婚をするも、3ヶ月で家を出て放浪することとなった。この間、1873年に渡米するまでの彼女の動向は詳しくわかっていないが、彼女自身の証言によると、チベットに滞在しそこで「大師」と呼ばれる存在から宗教的秘儀などを教わったという。渡米後は、互いに霊世界への関心が強かったことで意気投合した退役軍人の男性と結婚し、心霊現象の深い探究を目指す『神智学協会』を設立するに至った。

 1978年には本部をインドに移転する形でアメリカを出た。そこで彼女は、「大白色同胞団」(グレート・ホワイト・ブラザーフッド) と呼ばれる秘密結社と交信を行なったと証言しており、彼らからのメッセージを受け取るための手紙を空中から取り出したという逸話も残っている。彼女のこうした超能力的な行ないはほかにも数々語られており、開封せずに中の手紙を読むことが出来たといった逸話が語られてい る。

 最も重要なのは、彼女が晩年に著した『シークレット・ ドクトリン』(全二巻)である。これは、 彼女の有する壮大な神智学思想を体系化したものとなっており、『ジャーンの書』と呼ばれる神秘テキストに基づき、それに自身の解釈を踏まえて説かれたものである。彼女によれば、『ジャーンの書』は世界の宗教の原点となった書であり、内容は秘密言語「センザール語」で綴られた詩文であるという。『シークレット・ドクトリン』は非常に難解な内容であるが、現在に至るまでのオカルト思想の多くがこの著作の中で既に触れられているとされ、これがまさしくオカルト思想の基盤を作り上げたものとされる所以となった。

 彼女の思想は、古代ヨーロッパより伝わるグノーシス主義、新プラトン主義、ユダヤ教カバラなどを出発点として、アメリカやアジアをまたぎ、インドにおける輪廻思想や弥勒信仰をも融合させた一大体系となっている。しかし、彼女の先の著書については、多くの著作の引用にすぎないという批判もあり、さらに彼女の見せた能力についてもトリックが強く疑われている。

 ブラヴァツキー夫人の評価については、現在に至るまで称賛か非難で強く分かれているという。彼女はその後のオカルト界に強く影響を与えたことは間違いないが、それと同時にオカルトの肯定と否定の極端に二分した論調を生み出してしまったようにも思える。全面的肯定と絶対的否定は、オカルトであろうとなかろうと、科学的態度としても健全な姿勢であるとは言えない。ブラヴァツキー夫人にまつわるこの一連の出来事から、現代のわれわれは改めて考慮する必要があるだろう。

【参考記事・文献】
・大月俊寛『現代オカルトの根源』
・ブラヴァツキー夫人|エジソンを虜にした神智学協会の逸話
https://monspedia.com/ blavatsky/

【文 ナオキ・コムロ】

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文=ナオキ・コムロ(ミステリーニュースステーションATLAS編集部)

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