「週にたった3本」の髪の毛が2年で胃を塞いだ! 16歳少女から摘出された「ラプンツェル症候群」の毛髪塊

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 グリム童話に登場する、塔の窓から長い髪を垂らす乙女ラプンツェル。その名を冠した症状が、医学の世界に実在する。

 飲み込まれた髪が胃の中で塊になり、腸へと長い尾を伸ばしていく「ラプンツェル症候群」だ。医学誌 Journal of Medical Case Reports に掲載された症例報告は、精神疾患の既往も、目立つ脱毛の痕跡もない16歳の少女にそれが起きていたことを伝えている。

一日中続いた嘔吐、CTが映し出した胃の中の「異物」

 少女が救急外来に運ばれたのは、嘔吐が丸一日止まらなくなったためだった。CT(コンピュータ断層撮影)で撮影された腹部の画像には、見慣れない塊が写り込んでいた。医師たちが疑ったのは、毛髪の塊である。

 医学ではこれを毛髪胃石(トリコベゾアール)と呼ぶ。「tricho」は毛、「bezoar」は消化管に詰まった塊を意味する。ヒトを含む哺乳類の消化酵素は、髪の主成分であるケラチンをほとんど分解できない。飲み込まれた毛は胃のひだに絡め取られ、抜けることも溶けることもなく、時間をかけて少しずつ絡み合っていく。

 少女の体内にあった塊は、胃から十二指腸(小腸の入り口)にまたがる大きさにまで育ち、消化管を完全に塞いでいた。内視鏡では届かず、外科手術で摘出するほかなかったという。

 ちなみに、ロンドン大学ユニヴァーシティ・カレッジの病理標本コレクションには、異様に長く伸びた毛髪胃石の標本が保管されている。胃の形をそのまま写し取った塊から、細い尾が垂れ下がっている——この「尾」こそが、童話の少女の名を借りた呼び名の由来だ。

画像は「ScienceAlert」より
画像は「ScienceAlert」より

「週に3本」——2年間、誰にも気づかれなかった習慣

 手術後の聞き取りで、少女は約2年前から自分の髪を抜いて食べていたことを打ち明けた。ただし頻度は週に一度ほど、しかも一回につきわずか3本。この「ささやかさ」こそが、周囲の誰にも気づかれずに済んだ理由ではないかとみられている。

 自分の髪を強迫的に抜いてしまう抜毛症(トリコチロマニア)は、一般に思われているより珍しくない行動とされる。そこに、抜いた毛を口に運ぶ食毛症(トリコファジア)が加わったとき、毛髪胃石という重い合併症のリスクが生まれる。

 通常なら、部分的に髪が薄くなるという目に見えるサインが手がかりになる。だが少女の場合、それらしい脱毛はなく、精神疾患の診断歴もなかった。報告した医師らの記述によれば、彼女は気分障害の診断基準を満たさず、発達も年齢相応で、消化管が完全に詰まるまで無症状のままだったという。

 本人は最近の強いストレスや、ネグレクト、外傷、虐待などを否定している。ただ幼い頃から周期性の嘔吐を伴う片頭痛発作があり、そのために自宅学習を続けていた。

なぜ精神疾患の兆候がない少女に起きたのか

 ラプンツェル症候群は、強迫性障害(OCD)をはじめとする精神疾患と結びつけて語られることが多い。今回の症例が注目されるのは、その典型的な図式にきれいに収まらなかった点にある。

 背景として指摘されているのが、抜毛症や食毛症につきまとう社会的な偏見と恥の意識だ。当事者は行動を隠すために相当な労力を払うことがあり、周囲が気づける手がかりはさらに乏しくなる。

 医師らは、毛髪胃石が時に命に関わる危険をはらむことを踏まえ、思春期の女性が吐き気・嘔吐・腹痛を訴えた場合、目に見える脱毛や精神疾患の併存がなくても、この診断を選択肢から外すべきではないと注意を促している。手術後、少女には不安やうつ、OCDに用いられるセルトラリンが処方され、認知行動療法への紹介を受けたうえで退院したと報告されている。

 週に3本という数字は、2年分を積み上げても300本あまりにすぎない。その程度の癖が、外科手術でしか取り出せない塊に育つまでの2年間、本人も含めて誰ひとり異変に気づかなかった。自分の身体の内側で何が進行しているのか、当人にすらわからないことがある。この症例報告が突きつけているのは、その事実である。

参考:ScienceAlertJournal of Medical Case Reports、ほか

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2024.10.02 20:00心霊

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