近づく動物だけがバタバタと倒れ、神官は平然と生還した!? 古代人が恐れた「冥界への門」プルトニオンの正体

足を踏み入れた動物は次々と倒れて息絶える。ところが、そこに仕える神官たちだけは何事もなかったかのように戻ってくる——。古代の人々が「冥界への入口」と信じ、畏れ敬った聖域が、現在のトルコ南西部に実在する。
その名は「プルトニオン」。冥界の神プルトンと、その妻コレー(ペルセポネ)に捧げられた場所だ。近年の科学調査は、この伝説の背後に潜む「見えない殺し屋」の存在を突き止めている。
白い石灰棚の隣に口を開けた「地獄の入口」
プルトニオンがあるのは、古代都市ヒエラポリスの遺跡だ。真っ白な石灰棚と温泉で知られる観光地パムッカレのすぐそばに位置し、一帯は世界遺産にも登録されている。
聖域は、洞窟とそこから気体が噴き出す狭い裂け目の上に、劇場のような観覧席を備えた構造になっていた。イタリアの考古学調査団が発掘によってこの複合施設を特定している。
注目すべきは、この立地が偶然ではないという点だ。訪問者は管理された祭儀の場から、裂け目という危険な自然現象を安全に「見物」できた。洞窟と噴き出すガスは、建築と儀式によって、生者と死者の境界を示す舞台へと仕立て上げられていたのである。
古代ギリシャの地理学者ストラボンや、ローマの博物学者プリニウスもこの場所を書き残し、「冥界への道」としての評判を後世に伝えた。

地面を這う二酸化炭素と「神官だけが助かる」理由
伝説の正体に迫ったのが、ハーディ・プファンツ氏らの研究チームだ。携帯型のガス分析装置で現地を測定し、その成果を2019年に学術誌『Archaeological and Anthropological Sciences』(オンライン版は2018年)で発表した。
調査によると、洞窟近くの低い場所では、二酸化炭素が危険な濃度まで溜まっていたという。二酸化炭素は空気より重く、条件次第では地表近くに滞留して酸素を押しのける。頭を地面に近づけて歩く動物は倒れても、すぐ横に立つ人間はまだ比較的きれいな空気を吸っていられる、というわけだ。
この一帯は断層と熱水によって形作られた土地で、ヒエラポリスの温泉を生む地下の活動が、同時にガスも吐き出している。
古い記録にある「動物は死に、神官は生き残る」という対比も、これで説明がつくかもしれない。ガスが床付近で最も濃いなら、一段高い場所に立つ者はしばらく最も危険な層の上にいられる。さらに、どこにガスが溜まり、いつ近づけば安全かを熟知していた可能性もある。
殺生石と同じ構図、それでも残る「冥界」の気配
ただし、現代の測定はあくまで特定の調査時の状況を記録したものにすぎない。古代の儀式がどのように執り行われたのかを正確に再現できるわけではないし、古代の記述が出来事をありのままに伝えているとも限らない。
日本の読者なら、栃木県那須の「殺生石」を思い浮かべるかもしれない。九尾の狐の化身とされ、近づく鳥獣の命を奪うと恐れられた石だが、その周辺には火山ガスが噴き出している。見えない毒気を神話で読み解くという発想は、洋の東西を問わないようだ。
発掘では陶器や彫刻、動物の骨も見つかっており、ヘレニズム期からローマ時代にかけて聖域が姿を変えていった過程が追跡されている。ガスの噴出口は単なる奇妙な穴ではなく、大規模な宗教施設の中心に据えられていたのだ。
科学はガスという物理的な仕組みを明らかにした。だが、目の前で生き物が音もなく崩れ落ちる光景を見た古代人にとって、そこが冥界と地上をつなぐ裂け目でなかったと誰が言い切れるだろうか。仕組みが解明された今も、あの裂け目の奥に冥界の入口を重ねたくなる気持ちまでは、科学にも消し去れないはずだ。
参考:Curiosmos、Archaeological and Anthropological Sciences、ほか
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2024.10.02 20:00心霊近づく動物だけがバタバタと倒れ、神官は平然と生還した!? 古代人が恐れた「冥界への門」プルトニオンの正体のページです。トルコ、門、冥界などの最新ニュースは好奇心を刺激するオカルトニュースメディア、TOCANAで
