紀元前7000年の「トカゲ顔」土偶が語る蛇神信仰、なぜ現代は「爬虫類人」にすり替わったのか

世界中の古代文明には、申し合わせたように「人と蛇が融合した神」の姿が刻まれている。メソポタミアの粘土像、エジプトの女神、メソアメリカの創造神——時代も大陸も異なるのに共通するモチーフだ。
この普遍性は現代の「地球を裏で支配する爬虫類人(レプティリアン)」陰謀論の「証拠」として引用されることがあるが、両者の間には専門家が指摘する決定的な断絶があるという。
「トカゲ顔」土偶からケツァルコアトルまで、世界中の蛇神たち
最古の例とされるのが、イラク南部で出土した「ウバイド土偶」だ。紀元前7000〜6000年ごろのもので、高さ10〜15センチ、トカゲ状の鼻先と杏仁形の目を持つ。埋葬品として見つかる例が多く、豊穣祈願や頭蓋骨変形との関連が議論されている。

エジプトでは太陽神ラーの船を飲み込もうとする大蛇アポフィスが恐れられる一方、コブラ姿の女神ウアジェトは守護神として崇められ、ワニ神セベクはファラオの権力を象徴した。
インド神話の「ナーガ」は人と蛇が融合した地下王国の住人とされる。メソアメリカでは鳥と蛇を組み合わせたケツァルコアトル(ククルカン)が創造と農耕の神として崇拝され、チチェン・イッツァにはその名を冠したピラミッドが残る。
中国の竜が皇帝の権威を、オーストラリアの虹蛇が大地の創造を象徴するなど、蛇と竜のモチーフは大陸を問わず神話の中心にあった。

なぜ人は蛇を恐れると同時に神格化するのか
この普遍性には生物学的な説明もある。2006年、霊長類学者リン・イズベル氏が「蛇検出理論」を提唱した。何百万年も蛇の捕食圧にさらされた霊長類は、蛇をいち早く見分ける視覚系を進化させたとする仮説で、生後数ヶ月の乳児でも蛇の画像に強く反応するという実験結果が支持材料とされる。見逃せば命取りになる一方、誤って警戒しても損はないという非対称なリスクが、蛇への警戒心を刻み込んだという。
2019年の学術誌『L’Année psychologique』掲載の研究もこの仮説を支持している。心理学者ユングは、蛇を「脅威」と「隠された知恵」を併せ持つ元型と解釈した。医療の象徴「アスクレピオスの杖」も、この二重性を映した図像だ。
「地球を支配する爬虫類人」説はいつ生まれたのか
現代の「爬虫類人が地球を支配している」という説は、19世紀のオカルト運動に行き着く。神智学者ヘレナ・ブラヴァツキーは、人類以前に堕落した非人間の系統が存在したとする説を著書に記した。
1968年のエーリッヒ・フォン・デニケンの著作『神々の戦車』は古代宇宙飛行士説を大衆化し、1976年にはゼカリア・シッチンが、シュメール神話のアヌンナキを「資源採掘のために飛来した異星人」と再解釈している。
だが研究者によれば、「アヌンナキ」は単に「王族の子孫」を意味する言葉で、起源とされた惑星「ニビル」も楔形文字資料には存在しないという。
系譜を決定づけたのが、1990年代以降活動するイギリスの元サッカー選手デイビッド・アイクだ。1991年に「神の子」と公言して職を失った後、姿を変える爬虫類型宇宙人の一族が政財界の中枢に潜み、人間の負の感情をエネルギー源に世界を支配しているという説を提唱するようになった。
各国指導者から英王室まで名指しする主張には、反ユダヤ的言説との類似を指摘する声もある。2013年の米国調査では、約12%にあたる推計1200万人が何らかの形でレプティリアン信仰を支持しているという。
2025年発表の学術研究は、アイクらの理論を「秘匿された古代知識の再発見」ではなく、20世紀オカルト文化圏の言説の拡散と結論づけている。
古代の蛇神たちは、混沌と秩序、破壊と保護という神学的役割を担う存在だった。一方、地球征服を目論む宇宙的侵略者を記した古代文献は見つかっていない。両者が同じ「蛇」のモチーフを共有していることは確かだが、中身はまったくの別物のようだ。
参考:Mysterium Incognita、ほか
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