【TOCANA的UMAファイル #12】「ホダッグ」 ── 自分で”捏造”と白状した怪物が、いまや魔法動物図鑑の住人

1893年、米ウィスコンシン州ラインランダー近郊の森で、一頭の怪物がダイナマイトで木っ端微塵に吹き飛ばされた。焼け焦げた”遺骸”の写真は新聞を賑わせ、怪物は死んだはずだった。ところが3年後の1896年、まったく同じ怪物が今度は生きたまま捕らえられ、州内を巡業していた。仕留めたのも、生け捕りにしたのも、同じ男の仕業である。
基本データ
名前:ホダッグ(Hodag)。日本語では「ホダグ」とも表記される
生息地:米・ウィスコンシン州ラインランダー近郊の森
初出:1893年、地元紙が伝えた”発見”騒動。まもなく州紙・全国紙にも波及したと伝わる
姿:資料によって描写が割れる。当初の新聞報道では「カエルの頭、象のような顔、太く短い脚に巨大な爪、恐竜のような背、槍のついた尾」。一方、1910年に米国森林局がまとめた伐採労働者の伝承集では、体格はサイほど、鼻先はシャベル状というまるで別の姿で語られている。共通するのは、背に並ぶ太く湾曲したトゲと、牛のような角
由来:地元の測量士・材木査定人だったユージン・シェパードの”発見”報告がすべての発端。後年の文献では、酷使された牛が焼かれた灰から生まれ出た怪物、という民話的な由来も付け加えられた
事件簿
1893年、シェパードは森でホダッグと遭遇したと発表し、地元の男たちを集めてダイナマイトで仕留めたと報告した。焦げた”遺骸”の写真は評判となり、話は州内外へ広がっていったとされる。
3年後の1896年、シェパードは今度は「クマ相手のレスラーの協力とクロロホルムで、ホダッグを生け捕りにした」と発表する。捕らえた個体はオナイダ郡の品評会や州内各地に運ばれ、暗幕を張ったテントの中で公開されたそうだ。観客は入場料を払い、うなり声とともに動くホダッグを目にしたらしいが、その正体は針金で操られた作り物だった。
評判が全国紙にまで届くと、スミソニアン協会の調査団がラインランダーへ視察に訪れる計画が伝えられる。本物の科学者に検分される、という段になって、シェパードはついに白状した。ホダッグの正体は、木材と牛の皮・角を組み合わせて作った”ハリボテ”だったのである。


ホントカナ?
懐疑的に見れば、答えはとうに出ている。作った本人が、科学者の到着を待たずに「あれは作り物です」と自白しているのだから、これほど明快な”正体判明”UMAも珍しい。
ところが、話はそこで終わらなかった。捏造だと白状されてから130年近く経つのに、ホダッグはいまだにラインランダーの顔であり続けている。市の公式マスコットとなり、地元高校のチーム名になり、ラジオ局は自ら「WHDG」を名乗る。
毎年7月には「ホダッグ・カントリー・フェスティバル」なる音楽祭が開かれ、ガース・ブルックスやティム・マグロウといった大物が出演し、数万人規模の観客を集めているとされるが、中身は怪物とは無関係な純然たるカントリー音楽の祭典で、名前だけを借りているにすぎない。
極めつけは、2017年に改訂された『幻の動物とその生息地』だ。J・K・ローリングの世界の魔法動物学者ニュート・スキャマンダーは、ホダッグを北米に実在する魔法生物として書物に載せている。カエル顔で赤く光る目を持ち、角を粉にすれば酒に酔わず七日七晩眠らずにいられるとされ、生息地は「ウィスコンシン州の保護区」だという。自ら”偽物”だと認めた怪物が、120年以上の時を経て、今度はまったく別のフィクションの中で”本物の生物”として認定されてしまったのだ。
TOCANA的まとめ
ラインランダーの人々は、ホダッグが実在するかどうかの勝負を、とうの昔に降りているらしい。1893年に一人の男が仕掛けた冗談を、町ぐるみで100年以上大切に育て、マスコットにし、名物商品にし、音楽祭の看板にまで仕立て上げてきた。正体がバレたあとも、これほど長く可愛がられ続けるUMAはそう多くない。作り物と分かっていてなお手放さなかった土地があると思うと、一度その町を歩いてみたくなる。

トリビア
ラインランダー周辺のゴルファーや釣り人の間では、なくしたゴルフボールや不漁の原因を「ホダッグの仕業」にする冗談が、いまも現役で使われているそうだ。
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