30年間「頭蓋骨の破片」ばかりが出てきた世界最古の神殿で、手つかずの墓が! ギョベクリ・テペ「頭部崇拝」説は揺らぐのか

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 T字型の巨石柱が立ち並ぶトルコの遺跡、ギョベクリ・テペ。知られている限り最古の記念碑的聖域とされるこの丘では、1995年の発掘開始以来、人骨が出続けてきた。ところが、完全な骨格として見つかったものは一体もなかった。

 肋骨、指の骨、そして頭蓋骨の破片。散らばった約1000点の骨のうち、なぜか頭部の破片が異様に多い。この「頭の丘」の謎に、発掘史上初めて見つかった手つかずの墓2基が新たな一石を投じている。

片隅に積まれた3つの頭蓋骨と、東を向いて眠る女性

 研究をまとめたのは、ドイツ考古学研究所(DAI)の生物考古学者ユリア・グレスキー氏と、2015年から発掘調査を統括する同研究所のリー・クレア氏だ。成果は2026年9月、科学誌『PLOS One』で発表された。

 1基目は2017年、排水溝の工事中に偶然見つかった。先土器新石器時代Bの建物の漆喰床に掘られた腎臓形の穴で、35歳以上の女性、20〜30歳の男性、11〜14歳の少女の少なくとも3人が眠っていた。4人目がいた可能性もある。

 3つの頭蓋骨は穴の片隅にまとめて積まれ、残りの骨は中央に寄せられていた。新たな死者を葬るたびに、先に埋めた遺体を脇へ押しやったかのような配置だという。

 2基目は2012年に「建物A」の脇で発見されたが、時間切れで一度封じられ、発掘が完了したのは2022年だった。中には若い女性が敷き詰められた石の上で体を折り曲げて横たわり、頭を東に向けていた。骨格はほぼ埋葬時の位置を保っていた。

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画像は「Espacio Misterio」より

首のない像と頭蓋骨の切り傷、浮上した「頭部崇拝」説

 この2基が注目されるのは、遺跡に長年の謎があるからだ。墓以外から出た928点のばらばらの骨のうち、頭蓋骨の破片が408点を占め、首から下の骨の283点を大きく上回っていた。

 しかも遺跡には「切り離された頭」を思わせる表現があふれている。首のない人物像、胴体を持たない石の頭部、人間の頭を爪でつかむ動物のレリーフ。さらに複数の頭蓋骨には、頭頂の正中線に沿って深い切り込みが刻まれていた。

 カラスの仲間の骨が多いことから、遺体を野ざらしにして鳥に食べさせる儀式があったとする見方まで出た。近隣の同時代遺跡サイブルチでは19人以上の頭蓋骨や長骨が石のベンチに並べられ、セフェルテペでは21個以上の頭蓋骨を納めた部屋も見つかっている。頭部をめぐる儀式が、この一帯で盛んだったのは確かだ。

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誰も触れなかった遺体が語った「斜面の墓地」仮説

 ところが今回の分析は、儀式説に疑問を投げかける。研究チームが2基の墓の骨と散乱骨を比べると、骨表面を覆う石灰質の殻、土圧によるギザギザの骨折、ネズミのかじり跡という同じ損傷パターンが見つかった。

 決め手は建物A脇の女性だ。一度も掘り返されていない遺体の骨でさえ、端が失われて同じように割れていた。損傷だけを根拠に、人の手が加わったとは言えなくなったのだ。

 研究チームが示した仮説はこうだ。神殿群は窪地にあり、周囲の高台には住居が並んでいた。雨や建物の重み、地震などによって、住居の墓が何世紀もかけて神殿側へ滑り落ちた。約3000平方メートルにわたる骨の散乱は、儀式の跡ではなく、斜面を流れ下った墓地の残骸だったのかもしれない。

 もっとも、地滑りでは説明できない頭蓋骨の深い切り傷は、今も謎のまま残っている。ギョベクリ・テペは頭部の儀式の舞台だったのか、それとも偶然そう見えていただけなのか。丘を築いた人々が切り離された頭に何を託したのか、その答えはまだ土の中にある。

参考:Espacio Misterio、PLOS One、ほか

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